Research Abstract |
(1)停留精巣モデルラットの作成,および精巣の組織学的検討 実験的停留精巣の作成は,抗アンドロゲン剤であるflutamideを,妊娠14日〜20日のSprague-Dawleyラットへ7日間腹腔内投与することで行った。これにより,新生仔の雄ラットのおよそ90%に停留精巣が発生し,このモデルラットに対して,生後4,5,7週の時点で精巣固定術を行った。その結果,精巣固定術を行わなかった群では,精巣は著明に萎縮しており,アポトーシスを伴う造精機能障害を認めていた。一方で,精巣固定術を行った群では,早期伸長精子細胞までの分化を認めていた。さらに生後4週までに精巣固定術を行った群では,それよりも遅い時期に手術を行った群に比べ精巣の変性が軽度であった。これにより早期手術が造精機能障害を抑制することを実験的に明らかにすることができた。しかしながら固定術を行っても精子形成が完全に回復するまでには至らず,何らかの細胞分化異常が既に起こっている可能性が考えられた。 (2)ヒト停留精巣組織で特異的発現する遺伝子群の探索 当施設では,患者への十分な文書での説明・承諾の後,学内倫理委員会の承認のもと,精巣生検を行い,精巣組織を凍結保存している。これら保存している組織からmRNAを抽出し,対側下降精巣や陰嚢水腫の精巣組織のmRNAと比較し,発現差のある遺伝子を探索することを行った。本年度においては,これらmRNAからcDNAを合成し制限酵素で切断し,(1)停留精巣をtester,下降精巣をdriverとする群,(2)停留精巣をdriver,下降精巣をtesterとする2群を設定し,2方向のsubtraction法を行い,それぞれhybridizeしなかったものをベクターに組み込んで,subtracted libraryを作成することができた。今後,さらにこのlibraryを解析する予定である。
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