Research Abstract |
非古典的HLA class I分子であるHLA-E,-F,-Gは多型性に乏しく,HLA-A,-B,HLA class II分子が発現していない胎盤トロホブラストに揃って発現していることから,これら分子の母児免疫寛容機構への関与が注目されている。代表者は,このうちHLA-Eの胎盤脱落膜NK細胞の集積・分化機構への関与を解明するため,データベースに報告されている11種のHLA class Iシグナルペプチドを結合した11種のHLA-E発現細胞を作製中である。さらに,妊娠高血圧症候群,不育症胎盤におけるHLA-EおよびHLA-Gの発現の再検討を行うため,あらたに検体を採集中である。 また不育症胎盤におけるHLA-G発現の再検討に関連して,代表者は,体外受精卵の良好胚選定における可溶性HLA-G抗原検出の有用性について検討を行った。2002年,Fuzziらが,体外受精3日後の体外受精卵の培養上清中の可溶性HLA-G抗原検出が,良好胚選定に有用であるかのような報告をした。しかし,代表者はその測定方法,さらに受精3日後の受精卵に可溶性HLA-G抗原を産生する能力の有無について疑問をもち,体外受精卵培養上清109例中の可溶性HLA-G抗原の有無を検討した。その結果,体外受精卵培養上清中に可溶性HLA-G抗原は検出されず,またその着床率との関連も見出せなかった(J Reprod Immunol.2007:75(1):11-22.)。体外受精卵における可溶性HLA-G抗原発現の検討は,不育症におけるHLA-G分子の機能解明につながると考えられる,今後はさらに鋭敏・確実な可溶性HLA-G抗原検出方法を開発し,体外受精卵培養上清中の可溶性HLA-G抗原の有無,また良好胚選定における有用性をあきらかにしていく予定である。
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