2007 Fiscal Year Annual Research Report
転写因子Pou3f3の内耳発達における役割とエピジェネティック制御の解明
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19791251
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Research Institution | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
Principal Investigator |
務台 英樹 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), 東京医療センター(臨床研究センター)・聴覚平衡覚研究部, 研究員 (60415891)
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Keywords | 脳・神経 / 発生・文化 / ゲノム / 遺伝学 / 発現制御 |
Research Abstract |
転写因子Pou3f3は,発達中蝸牛感覚上皮においてエピジェネティックな転写制御を受ける候補遺伝子として同定された。本遺伝子の中枢神経系と腎臓での役割は研究されているが,エピジェネティック制御機構と哺乳類内耳での報告は世界初である。免疫組織学的解析により,Pou3f3は有毛細胞に分化する能力をもつ正中側領域(GER)と数種類の支持細胞(内指節,Pillar,Deiter's細胞)および間葉系細胞に発現し,新規の細胞マーカーとして有用であることを明らかにした。 Pou3f3欠損マウス蝸牛の各種細胞マーカー発現には,正常及びヘテロ個体と顕著な差は見られなかった。Pou3f2・Pou3f3両欠損マウスが顕著な中枢神経系形態形成異常を示すことから類推し,この内耳の免疫組織学的解析も行なったが,E19.5において形態および各種マーカー分子の分布に変化はみられなかった。細胞塊形成実験をしたところ,蝸牛上皮より生じた細胞塊数はPou3f3正常・ヘテロ・ホモ欠損マウス間に有意差は認められず,また細胞分化条件下でPou3f3欠損マウス由来細胞塊より神経及び有毛細胞マーカー陽性細胞がヘテロ個体由来細胞塊と同様に出現した。Pou3f3は胎生期の蝸牛上皮の細胞増殖と分化には重要ではないと考えられた。 以上より,Pou3f3は胎生期内耳感覚上皮においてGERおよび支持細胞特異的に発現することが明らかになり,新規の間葉系細胞および支持細胞マーカーとして,コルチ器発生研究に有用であると考えられた。本遺伝子は生後の蝸牛支持細胞および間葉系細胞において重要な働きをもつ可能性があり,その分子機能解明と工ピジエネティック転写制御機構に興味が持たれる。
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