2008 Fiscal Year Annual Research Report
転写因子Pou3f3の内耳発達における役割とエピジェネティック制御の解明
Project/Area Number |
19791251
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Research Institution | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
Principal Investigator |
務台 英樹 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), 聴覚平衡覚研究部, 研究員 (60415891)
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Keywords | 脳・神経 / 発生・分化 / ゲノム / 遺伝学 / 発現制御 |
Research Abstract |
哺乳類はその聴力発現時期に、蝸牛各種細胞の分化成熟と、それにともなう遺伝子発現の劇的変化をおこす。一方、遺伝子の長期から永続的発現抑制機構としてゲノムDNAのメチル化を介したエピジェネティック制御機構が知られる。 研究代表者は、転写因子Pou3f3を、生後発達中の哺乳類蝸牛感覚上皮においてエピジェネティック転写制御をうける遺伝子として同定することに成功した。エピジェネティック制御機構の暸乳類内耳発達への関与を示した報告は世界初である。定量的PCRおよびバイサルファイト法により、Pou3f3ゲノム上の3'領域が聴力発現前後において高メチル化修飾をうけることを解明し、転写量の低下、また近傍のノンコーディングRNAの同定とその転写量の低下との関連についても詳細な解析をおこなった。 また、免疫染色法により、Pou3f3が内耳聴覚・平衡覚上皮の支持細胞、有毛細胞前駆細胞および線維細胞に発現し、有毛細胞および神経節細胞には発現しないことを見出した。Pou3f3欠損マウスは生後1日以内で死亡する。胎生19日における蝸牛の形態、および細胞マーカーの分布が正常動物と顕著な変化がみられず、また感覚細胞前駆細胞の増殖能、分化能についても変化がないことから、Pou3f3は胎生期の蝸牛上皮の細胞増殖・分化よりも、生後の機能維持に重要な役割をもつと考えられた。さらに、聴力発現前後にPou3f3ゲノムがメチル化をうけることから、新規DNAメチル化酵素であるDnmt3a,3bの蝸牛における経時的発現と蝸牛内分布を免疫組織学的手法などにより解析した。 本研究は、内耳発達におけるPou3f3の役割を、ゲノムメチル化による転写調節機構解析から遺伝子欠損動物の解析まで行い、現在その成果を論文にまとめ再投稿中である。
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Research Products
(3 results)