2008 Fiscal Year Annual Research Report
急性内耳小胞体ストレスによる難聴の病態解析と新規治療法開発のための基礎的研究
Project/Area Number |
19791252
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Research Institution | Matsumoto Dental University |
Principal Investigator |
藤波 義明 Matsumoto Dental University, 歯学部, 助手 (80392801)
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Keywords | 小胞体ストレス / 難聴 / モデル動物 / 細胞傷害 / 内耳 / Tunicamycin / CHOP / シャペロン |
Research Abstract |
これまでの研究成果で我々は、急性内耳エネルギー不全モデルの蝸牛外側壁の細胞死に小胞体(ER)ストレスの関与を報告している。昨年度の研究成果ではERストレスを惹起するN型糖鎖修飾阻害剤Tunicamych(TM)の内耳局所投与にて聴力が低下することを示し、またTMに対する感受性は外有毛細胞が最も高いことを示した。今年度はさらに詳細な蝸牛組織の解析、TMモデルと他のERストレス誘導薬投与による難聴との比較およびケミカルシャペロン投与による治療法の確立を目指した。 外有毛細胞のみの傷害で70-80dBの聴力低下は考えにくいため、内有毛細胞および蝸牛神経節について電子顕微鏡解析を行った。TM200ng投与7日後では内有毛細胞、蝸牛神経節ともに細胞死は引き起こされていなかったが、ERやミトコンドリアなどの細胞内小器官は膨潤しているなど異常をきたしていた。TM200ng投与7日後での聴力閾値上昇に、外有毛細胞の細胞死の他に、内有毛細胞や蝸牛神経節の機能障害が関与している可能性が示唆された。次に、TMと同経路でのER-ゴルジ体間輸送阻害剤Brefeldin AやERCa^<2+>-ATPase阻害剤ThapsigarginといったERストレス誘導薬投与では聴力閾値の上昇は起こらなかった。TM以外のERストレス誘導薬では難聴にならなかったことから、内耳細胞はERストレスの中でもN型糖鎖修飾阻害による立体構造形成不良タンパク質の蓄積に特異的に脆弱である可能性が考えられた。浸透圧ポンプを使用した投与方法の確立では、半規管へのチューブの留置に成功した。治療薬投与を試みる前に、まず色素を持続投与し、蝸牛内への蝸牛頂回転までの色素到達を確認した。しかしながら、生理食塩水投与においても聴力閾値の低下が起きており、投与方法の改良あるいはさらに小流量の浸透圧ポンプが必要と考えられた。
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