2007 Fiscal Year Annual Research Report
発達期水晶体の透明性獲得機構の解明:Spring-8X線回折による統合的解析
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19791269
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
森實 祐基 Okayama University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (50432646)
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Keywords | 水晶体 / 白内障 / クリスタリン / X線回折 |
Research Abstract |
<目的> 水晶体はその発生初期には混濁しておりその後発生後期にかけて透明になることが知られている。しかし、水晶体が透明性を獲得する過程のメカニズムについては十分解明されていない。 水晶体における分子間近距離秩序は、分子量20 kDa のαA,Bクリスタリンが作る平均分子量800 kDa、直径15 nmの粒子の配列であると考えられている。この集合体をX線が通過すると、電子密度の高低を反映して、平均分子間距離に反比例した直径を持つリング状のX線回折像として現される。平成19年度、私は水晶体が発育期においてどのように透明性と高い屈折率を獲得していくかを把握するためにラット新生児を用いて水晶体タンパク量とX線回折像の経時的変化を観察した。 <方法と結果> 生後5日、10日、15日目のラット水晶体をBicinchonianate 法を用いてウシ血清アルブミンを標準としてタンパク濃度を計測した。また、X線回折像についても同様の生後日数のものを37℃で計測した。X線の波長は1Å、カメラ長は1.5mと同様の条件とした。X線は光軸と平行に水晶体の中心を通過させた。水晶体のタンパク濃度は274.4±39.6,347.4±41.6,569.0±60.7[mg/ml lens volume](それぞれn=5)と生後日数とともに上昇した。X線像では、生後10日までは散乱のみで回折像を認めなかったが15日目では約15 nmに該当するリング状の回折像が出現した。 <結論> 水晶体タンパク濃度は生後10日から15日の間に著名に上昇し、それに伴いX線回折像も出現した。この回折像を成ラット水晶体のものと比べると分子量の大きい部分の輝度が高く、幼弱な水晶体ほど大きな粒子を含んでおり成長に伴って均一な大きさに統一されると考えた。
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