2007 Fiscal Year Annual Research Report
ストレプトコッカス・ミュータンスのクオラムセンシング機構とバイオフィルム
Project/Area Number |
19791401
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
鹿山 鎭男 The University of Tokushima, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (50432761)
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Keywords | ストレプトコッカス・ミュータンス / クオラムセンシング機構 / バイオフィルム |
Research Abstract |
細菌は、自己が不利な環境におかれた場合に菌体外に多糖などを産生し、バイオフィルムを形成することによってその危機から逃れようとする。このバイオフィルム形成の結果がバイオフィルム感染症であり、歯科領域ではう蝕、歯周病、慢性骨髄炎などが挙げられる。申請者らの目的は、S.mutansにおける病原因子を解明していくことにより、う蝕や歯髄炎発症のメカニズムを探り、従来の方法とは全く異なったう蝕治療法、予防法の開発をすることである。 この解析にあたり、バイオフィルム形成におけるスクロースエンザイムII(scrA)遺伝子の役割を解析することにした。この遺伝子のカスケードの上流に、クオラムセンシング機構が存在すると著者は推測している。scrA遺伝子変異株の培養上清中における非水溶性及び水溶性グルカンの産生量は、高濃度スクロース存在下で親株よりも有意に少なかった。また、象牙質板に付着した非水溶性グルカン産生量も、親株より有意に少なかった。しかし、scrA遺伝子変異株の産生するグルカン量はスクロース存在下では非存在下に比べて増加していた。このことから、scrA遺伝子を欠損させることにより、スクロースの代謝経路が部分的に遮断されたことが考えられる。この事実は、scrA遺伝子がバイオフィルム形成に重要な役割を担っているということを示唆していると思われる。これらの結果より、バイオフィルム形成を阻害する治療法を確立する上でscrA 遺伝子を阻害することが非常に重要であると考えられる。
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