2007 Fiscal Year Annual Research Report
癌転移抑制因子CD82による口腔癌の細胞間接着制御機構の解析と臨床応用
Project/Area Number |
19791530
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Research Institution | Matsumoto Dental University |
Principal Investigator |
高橋 美穂 Matsumoto Dental University, 歯学部, 助教 (00444795)
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Keywords | 癌 / 遺伝子 / 細胞・組織 / シグナル伝達 / CD82 |
Research Abstract |
癌転移抑制遺伝子CD82/KAI-1がc-Metと複合体を形成し、c-Metアダプター蛋白質の結合を阻害することにより癌細胞の遊走を抑制することが明らかにされていることから、CD82/KAI-1の発現に伴って細胞遊走に関与するシグナルが制御され、細胞運動関連酵素の発現も変動することが推察される。そこで本研究では、CD82低発現細胞株にCD82を遺伝子導入したh1229/CD82transfectantを用いてCD82発現に伴う増殖・転移関連シグナル伝達機構の変化を検討するとともに、CD82発現による浸潤転移関連酵素の変動をマイクロアレイで検討した。まず、CD82による遺伝子の挙動を網羅的に解析するためにマイクロアレイを行なった。CD82導入株では、蛋白質分解酵素であるジペプチジルペプチダーゼ(以下DPP)と結合するisomeraseやDPP4が高発現していた。一方、DPP9,MMP1,MMP-10に加え、TGF-β1とその受容体遺伝子の発現が抑制された。このように、CD82発現によってジペプチド加水分解酵素に変動がみられたことからアミノペプチダーゼの発現を検討した。Real timePCRでは、CD82発現によりDPP9の発現が抑制されたが、DPP4,8には有意な変動がみられなかった。酵素活性を比較すると、細胞抽出液の酵素活性の平均値はCD82導入株で有意に高値を示した。細胞質分画では有意な差は認められなかったが、膜分画ではCD82導入株で活性が有意に上昇した。この膜分画にDPP4が存在することから、この活性はDPP4活性である考えられた。現在までのDPPに関する報告と本研究をまとめると、CD82とc-Metの結合によって低分子量G蛋白質による細胞遊走が抑制されると共に、DPP4活性が上昇し、ケモタキシス、細胞間接着、細胞外基質分解活性が低下することが示唆された。今後、CD82と各酵素蛋白質の発現誘導経路、DPP8,9の細胞内局在とその役割について明らかにする予定である。
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