Research Abstract |
1)in vitro の系で滑膜細胞に効率良く抗炎症性サイトカイン遺伝子を導入させる条件の確立 ウサギ滑膜組織からアウトグロース法で得た滑膜由来細胞は,表面抗原(CD44)発現に個体差が大きく,超音波出力,照射条件およびマイクロバブルの混入量を一定にしても抗TNF-α抗体発現プラスミドベクターの導入効率に大きな差が生じた。そこで,市販のウサギ膝関節滑膜細胞であるHIG-82細胞を用いて至適導入条件を検討したところ,超音波出力は2.0W,照射条件は1MHzDuty比10%,照射時間30秒,また,マイクロバブル混入量は総量の5-8%程度が至適条件であり,WesternBlotにて抗TNF-α抗体の細胞外発現が確認された。これにより,培養滑膜細胞に対する抗炎症性サイトカイン抗TNF-α抗体発現プラスミドベクターの至適導入条件が確立された。 2)正常ウサギ顎関節での抗TNF-α抗体発現の確認 in vitroの検討で決定した条件を参考に,ウサギ正常顎関節に超音波遺伝子導入を行った。分析は抗TNF-α抗体のプラスミドベクターにGreen Fluorescence Protein(GFP)プラスミドを付けておき,採取した関節液中のGFP量を蛍光光度計で測定する予定であったが,関節液採取が困難で採取量に個体差が生じた。そのため,GFP発現量が一定ではなく,関節液中での発現は確認できたものの,定量的なデータではなかった。対策として生理的食塩水のパンピングによる希釈回収方式にて得られた検体に対する定量評価に変更して再検討する予定である。組織中の遺伝子発現においては,免疫組織学的検討により,関節軟骨,滑膜および関節円板組織に対して導入遺伝子の発現と抗TNF-α抗体の発現が認められたが,局在と発現率は個体差が大きかった。原因として超音波プローブを顎関節外皮膚より作用させたため,関節腔への到達に個体差があったと考えられる。その影響を考慮して,再度マイクロバブルの混入量を検討する必要がある。また,関節腔内へ直接挿入できるプローブの開発も必要である。
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