2008 Fiscal Year Annual Research Report
高気圧酸素療法を適用した上顎歯槽骨延長部への歯の移植に関する実験的研究
Project/Area Number |
19791567
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長濱 浩平 The University of Tokyo, 医学部・附属病院, 医員 (60401361)
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Keywords | 口腔機能再建 / 高気圧酸素療法 / 歯槽骨延長 / 歯牙移植 |
Research Abstract |
<目的>歯槽骨延長による新生骨部位への歯の移植の成功率をあげるためには、移植床、移植歯、移植環境を良好とする必要性がある。今年度は、移植床である骨延長部の総骨延長量が骨延長部位歯髄血流量及び骨組織回復に対しどのような関連性を持つか検討した。<方法>ビーグル犬歯槽骨延長モデルにおいて、6,10mm延長群の2群を設定し、上記検討を行った。<結果>両群の上顎犬歯歯髄の血流量は、骨延長期間中は有意差がなく、骨延長開始後10日目以降の血流回復パーセンテージに有意差を認め、術前レベルへの回復も6mm延長群の方が早期であった。一般に、額顔面領域の骨には骨髄組織が少ないため、仮骨形成に重要な血液の供給のためには骨膜の保存は重要であるといわれているが、延長量が多ければ、骨膜の追随レベルが低下し、骨延長部新生骨及び周辺部組織の回復に影響が及ぶと考えられる。また、pQCTでは、骨面積、骨塩量は、皮質骨領域にて最も顕著な差が認められ、次いで皮質骨下領域も6mm延長群において有意に大きい結果となった。骨硬化期間中に皮質骨の形成が進み、6mm延長群において、より緻密な骨構造に変化したと考えられる。更に、組織形態計測の結果では、延長量が少ない6mm延長群の方が個々の骨梁が厚く、骨梁同士の連続性が高いこと歩観察され、広範囲にわたる新生骨組織を認めた。総骨延長量が小さい群で、より良好な治癒が得られた本実験結果を鑑みると、延長量の設定は、術後の安定性を得るために重要であることが示された。今回採用した6mmと10mmという延長量は、それぞれ小臼歯、大臼歯の歯冠の近遠心長に相当するとの仮定のもとに設定した。実際の臨床において、口唇裂・口蓋裂患者の歯槽骨延長術の後、骨延長部位に歯の移動や移植等を試みる場合もあるが、その際、現実的な骨硬化期間内において、施行可能な総骨延長量を慎重に考えていく必要がある。
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