2008 Fiscal Year Annual Research Report
新規炎症性メディエーターHMGB1を軸とした歯周病進行と歯周病態制御の解析
Project/Area Number |
19791618
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
森元 陽子 Kagoshima University, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (30437967)
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Keywords | HMGB1 / Ca9-22 / IL-8 / ERK / 歯周病 |
Research Abstract |
High mobility group box 1(HMGB1)は非ヒストンDNA結合タンパクであり、核内に存在する場合には転写やDNAの安定化に関与する。細胞外に放出されると、炎症性サイトカインの産生を誘導する作用が認められ、炎症の後期メディエーターとしての機能があることが報告されている。これまでの研究で、我々は歯周病罹患歯肉におけるHMGB1の存在を確認し、TNF-α刺激によりヒト歯肉上皮細胞からHMGB1が放出されることを示した。しかし、現在のところ歯周組織におけるHMGB1の役割は解明されていない。そこで今回の研究では、歯周病の病因におけるHMGB1の役割を検討するために、ヒト歯肉上皮細胞(Ca9-22)において、炎症性サイトカインの中でも炎症性細胞浸潤に関わるIL-8の産生に及ぼすHMGB1の影響を調べた。得られた結果を下に示す。 1. 歯周炎罹患組織において歯肉上皮細胞にRAGEの発現が認められた。 2. HMGB1刺激により濃度・時間依存的にCa9-22からのIL-8放出が誘導された。 3. HMGB1刺激によりERKがリン酸化された。また、ERKインヒビター(UOI26)で処理することにより、HMGB1刺激によるIL-8放出の抑制が認められた。 4. 抗HMGB1抗体で処理することによりHMGB1刺激によるIL-8放出の抑制が認められた。 本研究から歯肉上皮細胞をHMGB1で刺激することによりIL-8産生が誘導され、それはERKを介して放出されることが示された。このことから、歯周病局所におけるHMGB1の放出は、炎症性細胞の浸潤に関わっている可能性がある。今後、他の歯周組織細胞でのHMGB1発現、HMGB1刺激によるサイトカイン産生を検索すると共に、歯周病の病態との関連性を詳細に検討していく予定である。
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