Research Abstract |
誤嚥の原因の多くは口腔機能に依存するといわれている.したがって,誤嚥のリスクの観点から嚥下時の口腔機能(食塊形成機能)を評価する必要がある.本研究では,経鼻内視鏡を用いて,口腔から咽頭に送り込まれた食塊の状態を視覚的に評価することにより,誤嚥防止の観点からの食塊形成機能評価方法を確立することを目的としている. 本年度の目標は,被験食品の決定と健常者データの収集であった.本年度は暫定的に被験食品として2色のクッキーと2色の米飯を用いた.健常成人を対象に2色の同一食品を同時に摂取するように指示し,その時の食塊の状態を経鼻内視鏡で観察し,視覚的に評価を行った.その結果,2種類の食品は視認性が良く,被験食品として使用できることが示された. 健常者の咽頭での食塊の状態を暫定的に3つの項目に分けて評価した.混和度,凝集度,粉砕度の3つである,これら3つの項目をそれぞれ,良好,中等度,不良の3段階に分けて評価を行った.その結果,健常者では米飯については,「よく咬んで食べた時」のほうが「いつもどおり咬んで食べた時」と比べると凝集度,粉砕度において有意に良好な食塊形成を示した.混和度は有意差が無かった.一方,クッキーについては,「よく咬んだ時」と「いつもどおり」で,全ての項目について有意な差はなかった.したがって,以上の結果から,評価項目として混和度,凝集度,粉砕度が有用であること,被験食品としては,米飯が適していることが示された. 来年度以降は,この結果をもとにして,健常者データを増やし基準値を求めると同時に,義歯装着症例(義歯ありとなし),嚥下障害の症例,麻痺のある症例,などのデータを収集していく予定である.同時に,評価項目や被験食品の改善も適宜行っていく予定としている.
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