2009 Fiscal Year Annual Research Report
植込み型除細動器植込み患者とその家族の療養経験の経時的変化に関する研究
Project/Area Number |
19791696
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
齊藤 奈緒 Kobe University, 保健学研究科, 助教 (20403298)
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Keywords | 植込み型除細動器(ICD) / 療養経験 / ケーススタディ・リサーチ / 質的記述的研究 / 包括的リハビリテーション / 教育的支援 |
Research Abstract |
ICD患者は、突然死を防ぐ安心感を抱く一方で、不安、抑うつ、QOLの低下が問題となっている。ICD患者が、植込みに伴う制約を療養生活にうまく組み入れ、再構築できるように支援するために、19年度から32名に、植込み後1年間(6回:1週間・1・4・7・10・13ヶ月後)、療養経験に関する半構成的面接と心理社会的側面に関する質問紙(QOL:SF-36v2、気分状態:POMS短縮版)を縦断調査した。ケーススタディ・リサーチを用い、ケース毎に時系列分析した後、分析的一般化を試みた。面接内容は質的記述的に、質問紙は各因子の性年齢調整得点を算出して量的に分析した。 目的(1)療養経験,心理社会的側面の変化については、ICD患者は、不確かさ,不安,ICDへの不満足という『不整脈・ICD植込みによる困惑』を抱く中で、安全な生活活動と周囲との関わりを確認調整しながら『不整脈・ICD・生かされる自分との対峙と確認』をし、自分の病気を承認してICDを意味づけ、『不整脈・ICDと共に生きる』療養生活の再構築のプロセスをたどっていた。このプロセスの中で、常に全体的健康感が有意に低かった。SF36では心の健康・活力は明らかな低値を示さなかったが、POMSでは、不安・抑うつよりも、疲労・混乱が強く活気がない気分状態を呈し、経過に伴い悪化していた。したがって、患者の疲労感や混乱に着目する必要がある。これらの結果は、国際学会で一般口演、ポスター発表した。目的(2)これらの変化の要因は、失神発作体験、植込み決断過程、リハビリテーション、植込み後の作動と不整脈、運転制限、職業等が関連している。これらが、患者なりの日常生活活動の拡大や、ICDを自分にとって価値あるものとして意味づけることを妨げ、結果的にQOLが低下していることが考察された。(特に、目的(2)に関する最終的な具体的データや考察は、数名の対象者の6回目の調査結果が4月末となるため、成果報告書および論文として公表する。)
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