2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19791704
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
末次 美子 Kyushu University, 大学院・医学研究院, 助教 (70437789)
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Keywords | 生殖看護 / 母親役割獲得過程 / 精神分析 / 家族看護 / 心理療法 / 母性看護 / 新生児看護 |
Research Abstract |
研究計画について、乳幼児の精神発達の専門家である医師と心理学博士による審査を受けた。その結果、低出生体重児と母親との愛着理論、児童精神発達、早期関係性についての再検討を要した。 文献検討から次のことが見出された。Winnicott(1987)は、母子を母親-乳児ユニットとしてとらえることの重要性を述べている。母親と乳児との間には投影同一化を介した幻想的相互作用が働いており、乳幼児に接している母親は、その表情やしぐさからさまざまな幻想をかき立てられ、自己の内的体験を再編して成熟していき、乳児の方も母親のまなざしや表情を通して自己像を確立していく。しかし早産児は、乳児らしい表情やしぐさが出現しにくく、また母子の接触が制限されることにより、母親乳児の相互作用が得られにくい。またBowlby(1976)は、赤ん坊が人間に愛着を示すのは、母親による欲求の充足ということが根底になっているとし、これを愛着の起源として強調している。しかし早産児へはNICU入院時の児の欲求のほとんどを医療者が満たすため、児が特定の愛着対象を捉えることや愛着を形成することに困難があることが推測される。 また不妊治療後早産した母子関係の事例検討会にて、不妊治療の体験の主観的認識が、どのようにこどもに投影されるか、そして投影された母親の関わりが、こどもの精神発達にどのような影響をもたらすかについて示唆を得た。 以上の再検討を経て、本研究の目的を、母親が児へどのような投影をしているかを明らかにし、母親の自己洞察を深め、母子相互作用の内容について検討していくこととした。本研究の対象者は、不妊治療後に早産するという非常に倫理的配慮を要し、配慮に欠けるインタビューを重ねることが対象者にとって侵襲的になりうるので、この目的の再検討は大変意味のある過程であったと考える。現在倫理審査申請中である。
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