Research Abstract |
我々は,音楽理論GTTMに基づき,音楽的知識が乏しい初心者でも高度な音楽的操作を可能とする作曲・編曲支援システムの実現を目指して研究を遂行している.本年度の主な成果は以下の2点である. ・GTTMに基づく音楽分析器の完全自動化 我々はこれまで,音楽理論GTTMを計算機実装用に拡張したexGTTMを提案し,GTTMの分析の結果得られるタイムスパン木を獲得するシステムATTA(Automatic Time-span Tree Analyzer)の実装を行ってきた.GTTMの計算機上への実装においては,従来,各ルールが競合し分析が困難となる問題が生じていたが,ATTAでは,調節可能なパラメータを導入し,ルールに優先度を設定することでその問題を解消していた.しかし,それらのパラメータの設定は手作業で行っていたため,パラメータを曲ごと適切に設定するために多大な労力を必要としていた.そこで本年度,タイムスパン木の安定度および拍節構造の安定度に基づき,ATTAのパラメータの値の最適化を行うFATTA(Full Automatic Time-span Tree Analyzer)を提案し,計算機上への実装を行った.FATTAは,楽曲構造分析に関する音楽理論GTTMのグルーピング構造分析,拍節構造分析,タイムスパン木分析および和性解析に関する音楽理論Tonal Pitch Spaceからなるが,本研究では,相互に依存するモジュール全体を対象として,その全パラメータを最適化する問題として定式化した.実験の結果,FATTAはベースラインでのATTAの性能に比べて高い正解率であることを確認した. ・GTTMに基づく音楽的操作の実現 あるメロディと別のメロディとの中間のメロディを生成する,メロディのモーフィング手法を構築した.FATTAの分析の結果得られるタイムスパン木は,曲中の各音の構造的な重要度を階層的に表示したもので,音楽の深層構造の分析を可能とする.本研究では,メロディの部分簡約法を提案し,タイムスパン木に対して最小上界,最大下界という演算を行うことでメロディのモーフィングを可能にした.
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