2008 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト生体における骨格筋無負荷最大短縮速度とその加齢変化
Project/Area Number |
19800010
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 一茂 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 助教 (00451849)
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Keywords | 生理学 / 老化 / 骨格筋 / 筋収縮 / 電気刺激 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ヒト生体における骨格筋無負荷最大短縮速度の測定法を確立し、その加齢変化について検討することである。得られた知見は以下の通りである。 1)筋に電気刺激を与えてから関節トルクが発揮されるまでの時間には、筋が電気的に興奮してから実際に動き始めるまでの時間遅れ(興奮-収縮連関)と、筋組織や腱組織に含まれる直列弾性要素の伸張に要する時間遅れ(張力の伝達)が含まれる。関節角度(筋長)変化に伴い、これらの時間遅れ成分がどのように変化するのかについて腓腹筋内側頭を対象に調べた。膝関節角度を様々に変えながら足関節底屈トルクを測定する装置を新たに開発し、これを利用して腓腹筋内側頭の張力の伝達に要する時間を測定した。測定対象は健康な成人男女80名(中高齢者を含む)とした。 2)腓腹筋内側頭の張力の伝達に要する時間は、膝関節角度にそれほど依存しなかった。これは、電気刺激を腓腹筋内側頭に選択的に与えたものの、その収縮力が結合組織を介してヒラメ筋に伝達されたためと考えられる。したがって、無負荷短縮速度を高精度に測定し、その加齢変化を観察するためには、こうしたアーチファクトの除去方法についてのさらなる検討が必要である。 3)一方、様々な肘関節角度における上腕二頭筋の張力の伝達に要する時間を、若齢男性を対象に調べた。その結果、興奮-収縮連関に要する時間は肘関節角度に依存しなかったが、張力の伝達に要する時間は、ある関節角度を境に、関節角度変化(筋長の短縮)に伴い増加した。 4)筋長(関節角度から推定)と張力の伝達に要する時間の関係を一次回帰することにより、上腕二頭筋の無負荷短縮速度(Vo)を算出した。その値は随意的な肘屈曲動作のスピードから推定した最大短縮速度(Vmax)を大きく上回るものであった(Vo/Vmax:2.23±0.95,P<0.01)。
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