Research Abstract |
バントは,野球における攻撃戦法のひとつであり,緊迫した接戦でよく用いられ,ボールをバットに当て,フェアゾーン内に転がす動作である.バント動作において,打者はバットを時間・空間的に適切な位置へ移動させる必要があり,その上,打球の勢いを減じさせることが要求され,バント動作は運動制御の観点から興味深い研究テーマといえる.平成19年度は,野球のバント動作におけるバットの空間位置を明らかにすることを目的として研究を実施し,主に1塁方向と3塁方向の打ち分けについて明らかにした.そこで,平成20年度は,投球の高さに対する身体各部位およびバットの動きを明らかにする研究を進めた.7人の大学野球選手および6名の一般大学生を被験者として実験を実施した.打球方向条件として1塁方向,投手方向,3塁方向の打球方向を設定して,実験室内において実際に投手が投げたボールを被験者にバントさせた.実験ではVicon512を使用し,バットヘッド,グリップの3次元位置の測定をおこなった.各試行において打球方向,打球速度,鉛直面での打球反射角度に関して,実際の場面を想定した成功と失敗の判断を行った. 実験の結果,投球の高さに対する調節において興味深いデータが得られた.野球の現場では,バントをする際に「バットのヘッドを立てたまま,膝を使って高さの調節をせよ」と一般的に指摘されているが,インパクト時のバットの鉛直方向角度とミート時のボールの高さは非常に高い相関を示しており,身長比50%以下の高さのボールに対しては,バットの角度が負(すなわち,グリップよりヘッドが下)の値を示した.したがって,バント動作はバットの平行移動だけでなく,水平面内における回転移動の組み合わせにより調節されていることが明らかとなった.しかし,回転移動と比較して平行移動の方が,ボールインパクトの高さ調節に対する貢献が高く,一般に指摘されている指導内容の意味を明らかにすることができ,現在,論文として投稿中である.
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