2008 Fiscal Year Annual Research Report
泳動電着法を用いたカーボンナノチューブマトリックス複合めっき膜の合成
Project/Area Number |
19810004
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
荻原 仁志 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 助教 (60452009)
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Keywords | カーボンナノチューブ / 薄膜 / 泳動電着 / 超撥水 |
Research Abstract |
多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を泳動電着法により成膜し,その薄膜の諸性質を調べた。その結果,電気泳動に用いる溶媒・電化付与剤の種類,印加電圧,泳動時間,泳動回数などの泳動条件により撥水性能が大きく異なるMWCNTが生成することがわかった。条件によってはMWCNT膜が親水的な挙動を示す場合もあり,また適切な条件を選ぶことで超撥水MWCNT膜も作製できることが明らかとなった。水に対する接触角が150°以上の表面は「超撥水表面」と呼ばれ,きわめてよく水を弾く性質を示すため,さまざまな応用が期待されている。次に,泳動電着法以外の手法によっても超撥水MWCNT薄膜を作製可能であるかを検討した。MWCNTを基板上に設置し,これを物理的にプレスすることで基板上へMWCNT薄膜を作製した(圧延法)。しかし,圧延法で作製した薄膜の接触角は150°以下であり,超撥水薄膜は得られなかった。走査型電子顕微鏡測定により,泳動電着法と圧延法で作製したMWCNT薄膜の形態を詳細に観察したところ,泳動電着法で作製した薄膜のほうが多孔質であることがわかった。薄膜が超撥水性を発現するためには,空気を多く含む表面構造が必須であることが知られている。泳動電着法では,薄膜作製直後は溶媒であるエタノールをMWCNT薄膜中に大量に含んでおり,乾燥過程においてエタノールが空気と置換することで多孔質な薄膜が得られ,結果的に超撥水性を示したと考えられる。すなわちMWCNT超撥水薄膜作製において,泳動電着法がきわめて有効な手法であることが示された。
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