2007 Fiscal Year Annual Research Report
カーボンナノチューブ内部の金属原子配位位置の制御によるナノデバイスの創製
Project/Area Number |
19810011
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
湯村 尚史 Kyoto Institute of Technology, 工芸科学研究科, 助教 (80452374)
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Keywords | カーボンナノチューブ / 密度汎関数法 / ナノ細孔閉じ込め効果 / 原子価結合論 / ホストーゲスト材料 / フラーレン |
Research Abstract |
本年度の研究により,カーボンナノチューブ内壁と内包(フラーレンゲスト)分子との共有結合生成を利用して,ナノチューブ表面での局所変形生成がコントロール可能であることを見いだした.実際には,ナノチューブホストーゲスト間で結合生成した構造と結合の存在しない構造(解裂構造)がともに局所安定であることを,大規模密度汎関数法計算により明らかにした.ここで,解裂構造でのゲストとホストとの間隔は,ファン・デル・ワールス距離に保たれている.これらの構造は,高分解能透過型電子顕微鏡観察の結果を再現したものである.さらに興味深いことに,この二つの構造はエネルギー的にほぼ等価である.この結果は,ホストーゲスト間に生じる共有結合が驚異的に弱いことを示している.この特異性は,内部共有結合の引力がホストーゲスト間の反発力により弱められることに由来する.これは"制限された空間での閉じ込め効果"である. さらに,この共有結合生成は,ナノチューブの表面構造の局所変形をもたらすという側面も有している.この局所変形は結合部位近傍のみに存在し,キノノイドパターンおよびブタジエンンパターンに相当する.このナノチューブ構造の変化は,原子価結合クラー表記に基づいたパイ電子カウントで理解できる.以上の結果により,ナノチューブ内部での共有結合生成解裂を利用することで,ナノチューブ表面の局所変形の有無を制御できることが分かった.また,ナノチューブ表面の局所変形により,遷移金属原子配位の安定なサイトが限定されることも見出している.
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