2007 Fiscal Year Annual Research Report
労使関係改革が豪州石炭産業の生産性に与えた影響の、DEAと統計的手法を用いた研究
Project/Area Number |
19810023
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Research Institution | International University of Japan |
Principal Investigator |
高橋 新吾 International University of Japan, 国際経営学研究科, 講師 (70445899)
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Keywords | Multi Tasking / Productivity / Bargaining Decentralization / Task contents / Job design |
Research Abstract |
本研究は、1990年代にオーストラリアで起こった「労使関係改革」がオーストラリアの石炭産業の生産性に及ぼした影響を推定することを目的とする。データを収集したところ「労使関係改革」によって、今まで細分化されていた仕事の区分が融合され、マルチタスク(Multi-tasking)な組織へと変化を遂げた炭鉱が多く現れたことが分かった。マルチタスクな組織への移行は、オーストラリア石炭産業のみの変化でなく、ほぼ世界各地で起こった重要な変化である。しかしながら、この変化がどの程度生産性に影響を及ぼしたのかについては決定的な推定結果がない。本年書いた論文で、以下の二つの点を明らかにした。(1)どのような仕事を融合すれば、マルチタスクな組織への移行が効果的に生産性を上昇することができるのか、(2)また、どの程度の生産性上昇を期待できるのか。過去の理論的な研究によれば、マルチタスクへの移行が生産性の上昇につながるためには、相補的な仕事を融合させる必要がある。オーストラリアの石炭産業は、以下の二つのタイプのマルチタスクを推し進めた。まず(I)機械を操縦する仕事と、機械の修理を行う仕事の区分を撤廃すること、次に(II)機械の種類による仕事の区分を撤廃すること、である。私は、前者(I)の仕事は相補的であるが、後者(II)は相補的ではない事を示した。マルチタスクな組織への移行がどの程度生産性を上昇させたか推定したところ、前者(I)の変化は、石炭産出量を33%増加させるが、後者(II)の変化は、生産性の上昇をもたらしていないことが分かった。この推定により、マルチタスクへの移行そのものよりも、どのような仕事が融合されていたのかが、生産性の上昇にとって重要だということが示された。特に、相補的な仕事を融合することが、マルチタスク的な組織が生産性へとつながるために最も重要だということがわかった。
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