2008 Fiscal Year Annual Research Report
農耕地における土壌有機物の分解率推定手法の確立と動態モデルの開発
Project/Area Number |
19810030
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Research Institution | National Institute for Agro-Environmental Sciences |
Principal Investigator |
上村 真由子 National Institute for Agro-Environmental Sciences, 大気環境研究領域, 農環研特別研究員 (60444569)
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Keywords | 土壌圏現象 / 環境変動 / Roth-Cモデル / 土壌有機炭素 / 農耕地 / マルコフ連鎖モンテカルロ法 |
Research Abstract |
本研究は,農耕地における土壌有機炭素の変動予測に不可欠な土壌有機炭素モデルを開発するために,データを整理・収集し,モデルパラメータの推定手法を確立することを目的としている.本年度は主に二つの成果を得た.まず,モデルの画分に沿って土壌中の炭素を分離,定量することを試みた.モデルパラメータの推定精度を上げるためには,土壌画分データの追加が必要なためである.既存の研究事例をもとに,ヨーロッパで確立された分離手法を日本の農耕地土壌にも適用したところ,非黒ボク土では,実験値とモデル計算値はよく合っており,難分解性画分での補正を行えばよりよい一致が得られた.しかし黒ボク土では,モデル計算で設定されていない難分解性画分が実験では分離されてしまうことから,黒ボク土を対象とする場合には手法の改良等の必要性が明らかになった. 次に,モデルに含まれる有機物画分の分解の温度依存性を示すパラメータを,土壌環境基礎調査における土壌炭素量の経時変化や環境要因データからベイズ推定を用いて逆推定を行った.各画分毎に温度依存性パラメータ推定を試みることで,土壌有機物の分解の難易が分解の温度依存性パラメータに及ぼす影響を調べた結果,分解の難易は温度依存性パラメータを大きく変化させなかった.また,全国5地点の非黒ボク土壌のサイトを対象に,各サイトの無窒素,化学肥料施用,堆肥施用といった管理ごとに温度依存性パラメータを得た結果,植物残差や化学肥料,堆肥に含まれる窒素量の増加に伴い,温度依存性パラメータは小さくなる傾向が見られた.
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