2007 Fiscal Year Annual Research Report
ヤナギ類における植物間ケミカルコミュニケーション機構の解析
Project/Area Number |
19810031
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Research Institution | National Institute for Agro-Environmental Sciences |
Principal Investigator |
釘宮 聡一 National Institute for Agro-Environmental Sciences, 生物多様性研究領域, 任期付研究員 (10455264)
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Keywords | 生物間相互作用 / 情報化学物質 / プラントトーク / 誘導防衛 / 昆虫 / 匂い応答性 / 分子生物学 / 化学生態学 |
Research Abstract |
パラントトークによって解発される対昆虫防衛機構に関わる遺伝子を明らかにするため、ヤナギ類の防衛関連遺伝子について、それらの発現の匂い応答を調べた。風洞装置内に設置したポット植ジャヤナギ(Salix eriocarpa)にヤナギルリハムシ(Plagiodera versicolora)2齢幼虫を導入し、食害株を準備した。食害株の風下に健全株を設置し、24時間および48時間トーク処理を行うことで匂い受信株を得た。また、食害株の風上に設置した健全株を対照株とした。トーク処理を行った後、食害株や匂い受信株、対照株からtotal RNAを抽出し、RT-PCRによって防御関連遺伝子の発現を比較した。その結果、食害株でlipoxigenaseやtrypsin inhibitorの発現が認められ、trypsin inhibitorは48時間受信株でも発現する傾向が見られた。しかしながら、いずれの遺伝子の発現量も個体差が大きく、ヤナギのように履歴の長い木本植物をこの手法で個体間比較することは困難なことも明らかとなり、むしろ、同じ個体内での発現比較から揮発性成分によるシグナル伝達(auto-signling)を解析する等のことに適していることが推察できた。 一方、植物の全身獲得抵抗性の発現に関与する植物ホルモンとしてサリチル酸(SA)とジャスモン酸(JA)が知られている。ヤナギの昆虫食害誘導防衛におけるシグナル伝達系を明らかにするため、健全株にMeSAおよびMeJAを局所処理し、RT-PCRによって防御関連遺伝子の発現を比較したところ、いずれの処理によってもtrypsin inhibitorの発現が誘導された。このことから、木本植物であるヤナギにおいても食害誘導防衛の発現にJAとSAが関与していることが示唆された。 以上の成果の一部は4th Asia-Pacific Conference on Chemical Ecologyで発表した。
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Research Products
(1 results)