2007 Fiscal Year Annual Research Report
無機炭酸利用能を持つ細菌群集の海洋物質循環過程への関わり
Project/Area Number |
19810033
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
山田 奈海葉 National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, 環境管理技術研究部門, 研究員 (90435769)
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Keywords | 海洋物質循環過程 / 無機炭酸 / 細菌群集 |
Research Abstract |
海洋では、植物プランクトンの光合成による有機物生産を始点とし、これを動物プランクトンなどの高次栄養段階者が順次捕食していく「古典的食物連鎖」と、従属栄養細菌による有機物の分解・利用を中心とする「腐食食物連鎖(微生物ループ)」の2種類が物質循環を駆動している。細菌群集は表層から(光の届かない)深層まで、現場の物理的環境を問わず広く存在し、物質循環駆動の上で極めて重要な役割を担っている。一方、海水中には、炭素量換算すると大気中の二酸化炭素の60倍にも相当する大量の無機炭酸が存在しており、海洋細菌の中には、有機物(だけ)ではなく無機炭酸を餌(基質)として取り込み、自身の体(有機物)に変換する能力を持つ細菌が存在することが明らかになりつつある。このような未知の食物連鎖が海洋の物質循環に潜在的に寄与している可能性を検討することは非常に重要である。 本研究では、無機炭酸利用能を持つ細菌の種類や存在量について調べる方法および無機炭酸を取り込んで有機物に変換するプロセスとその生産速度を知るための分析方法について検討し、現場実験によって検証することを目的としている。平成19年度は、無機炭酸利用能を持つ細菌の存在量として、過剰量の重炭酸塩を添加し、細胞分裂阻害剤と共に培養したときに、細胞が肥大・伸張する細菌をその指標とする方法を考案した。種類を調べる方法についても検討を進めている。また、有機物生産速度とそのプロセスを調べる方法として、放射性同位体標識した重炭酸塩を細菌細胞全体へ取り込む速度および細菌細胞のうちタンパク質画分へ取り込む速度を調べる方法について検討を行った。過去に採取・保存しておいた外洋の深層水を用いて検討した結果、細胞全体に取り込まれる重炭酸塩のうちタンパク質画分に取り込まれるものは、全体の20%程度であることが見積もられた。次年度は現場実験での検証を行う。
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