2008 Fiscal Year Annual Research Report
ロシアの東方拡大とムスリム支配機構の成立:18世紀後半のタタール人の役割
Project/Area Number |
19820007
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
濱本 真実 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 研究員 (00451782)
|
Keywords | タタール人 / ロシア / カザン / オレンブルク / 商人 / 中央アジア / ヴォルガ・ウラル地域 |
Research Abstract |
本年度は、帝政ロシア政府の支援を受けたタタール人による商工業活動に焦点を合わせて研究をおこなった。中でも、多くのタタール人が活躍した、ロシアと中央アジア間の貿易を重点的に研究した。 夏までに、昨年度末ヘルシンキとサンクト・ペテルブルクにおいて収集した史料と二次文献を読解・分析し、18世紀後半から19世紀にかけてのタタール人による遠隔地貿易の情報を抽出する作業をおこなった。その成果をロシア連邦タタールスタン共和国カザン市での国際会議「十字路にたつロシアのヴォルガ・ウラル地域:帝国・イスラーム・ナショナリティ」(9月19-20日)において「18世紀後半から19世紀におけるヴォルガ・ウラル地域と中央アジア間のタタール商人」という題目で報告をおこなった。光栄なことに、カザン大学における東洋学の碩学ミールカーシム・ウスマーノフ氏から、本報告に関して肯定的な評価を頂くことができた。また、モスクワ大学のアラーポフ教授からは、詳細なコメントをいただいた。 9月前半と10月中旬から下旬にかけてはモスクワにおいて史料調査をおこない、モスクワ周辺のタタール人に関する史料を収集した。 そして2月末に、課程博士論文をまとめ、かつ、発展させた形で、著書『「聖なるロシア」のイスラーム:17-18世紀タタール人の正教改宗』を出版した。本研究課題における研究成果は、第6章「18世紀前半のロシア・ムスリム社会:タタール商人の台頭」の後半部分に反映されている。 現在は、本研究課題の直接の成果ともいうべきカザンにおける国際会議での報告を、ロシア語の論文集に掲載するために、論文の形にまとめているところである。その論文においては、18世紀後半のタタール商人と政府との、政治・宗数的側面における協力関係が実証的に明らかにされる予定であり、帝政ロシアの東方進出をこれまでと違った観点から捉えることを試みる。
|