2007 Fiscal Year Annual Research Report
映画におけるデジタル映像技術の応用-創造的価値と歴史的位置づけについて
Project/Area Number |
19820009
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
石橋 今日美 Tokyo National University of Fine Arts and Music, 大学院・映像研究科, 助手 (60436706)
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Keywords | 映画 / 美学 / デジタル映像 / メディア / 表象文化 |
Research Abstract |
本年度は、先行研究事例が乏しい研究テーマゆえに、初期映画から、ハリウッド黄金期、最新のデジタル視覚効果を使用した最新公開映画作品まで、制作年度を問わず、可能な限りあらゆる作品を網羅酌に見た上で、たとえば「パニック映画」などさまざまなジャンル分類、または写真という他メディアに関連する作品群、など、研究対象となる膨大なコーパスを整理し、各作品の詳細な分析を進めていった。分析結果のデータベース化は引き続き進行中であり、先鋭的かつ生産的な視点、切り口を持った論文にまとめてゆく準備段階をほぼ達成できたと言えよう。ただし、当初画期的な作品分析ツールとして仏ポンピドゥー・センターで開発された「タイムラインは、映像研究ツールとして、アプリケーションの安定性、汎用性の観点から、まだまだ多くの問題点を抱えていることが判明し、本研究とは別枠で再検討・再開発の余地があることは認めざるを得なかった。 一方、研究代表者がその準備・開催に関与し、所属する機関で開催された、日本初の携帯電話のビデオ機能のみで制作された映像作品の映画祭では、作品上映と様々なディスカッションを通して、新たなメディアがもたらす真の創造的可能性とこれまで映画史において浮上したテーマや問題点(出現と消滅、語りの主体性、見る者の同一化など)を改めて考察する絶好の機会となった。研究者自身も携帯電話によって2時間あまりの長編作品を2月末に完成させ、海外の映画祭で客観的な作品評価を問うともに、実作をひとつの実験として得られた創作上の経験的データをもとに、日常的なデジタルモバイル機器が、表象芸術の歴史的スパンの中で、どのように位置づけられるか、改めて考察し、今年度の研究計画、活発な論文執筆、へと継続して取り組んでゆく方針である。
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