2008 Fiscal Year Annual Research Report
映画におけるデジタル映像技術の応用-創造的価値と歴史的位置づけについて
Project/Area Number |
19820009
|
Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
石橋 今日美 Tokyo University of Technology, メディア学部, 助教 (60436706)
|
Keywords | 映画 / 美学 / デジタル映像 / メディア / 表象文化 |
Research Abstract |
研究初年度、初期映画からハリウッド古典作品、最新デジタル視覚効果を多用した作品を可能な限り見た上で、進めていった各作品の分類・分析をもとに、今年度は映画と写真、絵画など、その他の表象芸術、映画誕生以前の視覚装置などとの関連性を探求していった。映画以前のスペクタクルであったパノラマ、ジオラマと今日の映画のスペクタクル性のみに注目した両者の類似性の指摘は、すでになされてきた。しかし、パリ国立図書館にて、それらの視覚装置が公開された当時の文献資料を調査した結果、見物客は描かれた光景にまつわる詳細なストーリーと、目線をガイドする矢印が記されたパンフレットを手にしていたことが判明した。つまり最新デジタル映像を駆使した映画作品が、「見せること」(スペクタクル性)と「物語ること」(ストーリー性)の危うい均衡上に成立しているように、映画以前の視覚装置も「見せること」だけで成立していたのではなく、物語性によって見物客をイリュージョンの世界に引き込んでいったことが分かる。また米映画研究者Tom Gunningが指摘する20世紀初頭、説話的機能が未発達で視覚的にインパクトの強いアクションを披瀝した「アトラクションの映画」と現代映画の観客を作品世界に取り込もうとするアプローチには、類似性が確認された。技術的に「新しい」イメージによる映画作品と、映画誕生以前の視覚装置や古典的フィルムの間には作品と観客との関係において、時代を超えた共通点が見出される。 現在最も身近なデジタル映像技術のひとつである、携帯電話のビデオ機能による映画的創造性を探る試みとして制作した、115分の長編フィクション作品『SPYDER』は、第38回ロッテルダム国際映画祭に正式招待され、映画の新たなあり方として評価された。
|