2008 Fiscal Year Annual Research Report
懐徳堂の「知」の生産-儒学を中心とした知識人の繋がり
Project/Area Number |
19820013
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
池田 光子 Osaka University, 文学研究科, 助教 (10452400)
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Keywords | 懐徳堂 / 中井履軒 / 近世儒学 / 日本漢学 |
Research Abstract |
本研究は、思想面と資料面との二方向から研究を進めるものである。以下、それぞれに分けて、研究実績の概要を記す。 1.資料研究について…懐徳堂関連未調査資料の一部をデータ化することと併せ、今後の懐徳堂研究を進める上で特に重要と思われた資料について、WEB上でその内容の一部が公開できるよう、データを作成した。具体的には、懐徳堂における『中庸』研究について着目し、中でも、中井履軒の『中庸逢原』について詳細な調査を行い、データを作成した。なお、従来の『中庸逢原』の翻刻は、自筆本の体裁に則り、経文と履軒の注釈のみであったが、より履軒の注釈の特徴が明確になるよう、朱子の注釈を加えた『中庸逢原』の翻刻を行い、これについては、紙媒体で発表した。 2.思想研究…従来、資料の重要性を指摘されていながら、研究が未着手であった中井履軒の『老婆心』に着目し、研究を行った。『老婆心』は、砂糖が薬としての側面を有していた当時において、砂糖の摂取による身体への悪影響を説いている資料である。近世後期は、儒学と医学との関連性が一つの大きな論点となっており、伊藤仁斎や太宰春台などの著名な儒学者たちが儒医について論議を行っていた。また、貝原益軒の『養生訓』の流行に代表されるように、人々の関心が身体の内部へと向いていた時代でもある。『養生訓』と『老婆心』との比較検討を通し、履軒の医に対する姿勢及びその独自性の一端を明らかにした。このことは、懐徳堂が官許学問所であったということから、近世儒学史上においても重要なことといえよう。
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Research Products
(5 results)