2008 Fiscal Year Annual Research Report
日本における家禽の歴史の解明-遺跡試料の原子・分子・組織・器官レベルからの検討
Project/Area Number |
19820015
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
江田 真毅 Tottori University, 医学部, 助教 (60452546)
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Keywords | 遺跡 / 家禽 / 家畜化 / ガチョウ / 考古動物学 / 古代DNA / 骨髄骨 / ニワトリ |
Research Abstract |
1.和蘭商館跡遺跡(長崎県長崎市・江戸時代)から出土したキジ科とガン亜科の骨を対象に組織切片を作成し、産卵期の雌の骨中にのみ形成される骨髄骨の有無を調査した。その結果、両分類群の骨で骨髄骨が検出された。野生のガン亜科は日本で繁殖しないことから、この結果は当時出島でガチョウが飼育されていたことを示唆するものと考えられた。これは、管見の限り日本で最初に形態によって同定されたガン亜科家禽の例である。遺跡試料に含まれる骨髄骨の組織学的分析の方法については国際考古動物学会・鳥類学分科会で、和蘭商館跡で検出されたガン亜科家禽については動物考古学研究会で発表した。2.キジ科・ガン亜科の野生個体と家畜個体の骨形態の相違の検出を目的に、ミュンヘン人類学・古解剖学コレクション(ドイツ・ミュンヘン)に所蔵されている骨標本を調査した。その結果、ニワトリの原種であるセキショクヤケイの長骨は、現在のニワトリ各品種と異なったプロポーションをもち、日本に生息するキジやヤマドリと類似性が高いことなどが明らかになった。この知見は、家畜化のごく初期段階のニワトリはキジやヤマドリとの形態による識別が困難であり、これまで見過ごされてきた可能性があることを示唆するものである。3.古代DNAによるキジ科とカモ科の種同定を目的にPCR用プライマーを設計し、現生の羽毛および和蘭商館跡遺跡から出土した両科の骨を対象にDNA解析をおこなった。その結果、現生試料では両科ともに種の判別に成功した。遺跡試料では、キジ科の骨では種判別に成功したが、カモ科ではDNAの増幅が確認できなかった。分析した試料の残存状態が悪かったことが原因と考えられる。4.草刈貝塚(千葉県千葉市・縄文時代中期〜中近世)、宮ノ下遺跡(大阪府東大阪市・弥生時代〜古墳時代)、広島城跡遺跡(広島県広島市・江戸時代)など、各遺跡から出土した鳥類遺体を分析した。
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