2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19820030
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
向後 恵里子 Waseda University, 教育・総合科学学術院, 助手 (80454015)
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Keywords | 美術史 / 芸術諸学 / 近・現代史 / 文化史 / 戦争 / 表象 / メディア |
Research Abstract |
本研究は、日露戦争(1904-05)の視覚イメージを、絵画作品や新聞・雑誌等を含む当時の多様なメディアを横断的・包括的に調査し、分析と考察を行うものである。今年度は07年度の遺漏を補うかたちをとり、以下のメディアについて調査を進めた。 (1)絵画作品:同時代文献と現存作品から可能な限り調査を進めた。戦争の直後より、とりわけ従軍画家の出現と戦争画の作成を望む声が多く、戦争画を取り扱う展覧会も少なくない数が開催されている。 (2)画報雑誌:画報雑誌の一覧を整備するとともに、各誌の個別調査を進めた。『軍国画報』(冨山房)など、多くの画報雑誌は口絵・挿絵を売り物とし、洋画・日本画の双方にわたって多くの画家たちが手を染めている。また『戦争文学』(育英舎)など、報道性ではなく物語性を重視した雑誌も存在し、多様な戦争のイメージ形成にはたらきかけている。 (3)新聞:大新聞・小新聞を問わず、多くの新聞紙面には挿絵が掲載され、また増えていることが確認できた。戦死者を中心に、兵士の肖像は多くの新聞で毎号掲載されており、従軍画家の手による「戦地の通信」や、海外の新聞・雑誌からの転載もよく見られる。また写真印刷も徐々に増加している。 (4)パノラマ:日露戦争期は、パノラマも人気を集めていた。上野と浅草をはじめ、いくつかのパノラマ館では大きな戦闘が題材に選ばれ、その掛け替えが報道されている。従軍画家が参加し、その描写の「真実らしさ」が評価される傾向が見られる。 以上の調査・分析により、従来未調査の部分が多く残されていた日露戦争と視覚文化のかかわりについて、基本的な見取図を描くことができた。また、戦争の表象をめぐる多様なあり方が明らかになるにつれ、日露戦争のイメージ形成の道筋が一つではなく多層的になされていること、戦争の推移に連れてその様相が移りかわってゆく様子をとらえることができた。
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Research Products
(1 results)