2008 Fiscal Year Annual Research Report
ジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』における人間身体とテクノロジーの表象
Project/Area Number |
19820033
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
坂内 太 Waseda University, 文学学術院, 講師 (60453990)
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Keywords | ジェイムズ・ジョイス / 身体表象 / モダニズム / ユリシーズ |
Research Abstract |
[研究目的]アイルランドの作家ジェイムズ・ジョイスめ長編『ユリシーズ』を研究対象とし、人間身体の表象(およびテクノロジーの表象)に関するテキスト分析を通じて、『ユリシーズ』における身体論的研究を展開する。モダニズム文学の代表的な作品である『ユリシーズ』については、これまで様々なテクスト分析が行われてきたが、「間テクスト性」を巡る様々な影響関係等に力点が置かれてきたゆえに等閑視されている、『ユリシーズ』における人間の身体的な在り方とその表象について考察することを主要な目的とする。 [研究方法]ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』に現れる人間身体の表象、及びテクノロジーの表象を、エピソードごとに分析・検討する。第1エピソードの所謂「テレマコス」から第18エピソードの「ペネロペイア」に至る各々のエピソードに現れた身体表象を精査して、エピソードごとの傾向、及び登場人物と身体表象との間に見られる相関関係を分析する。また、それに付随した人間の視覚・知覚作用とその拡張に関わる様々なテクノロジーの表象に関する分析を行う。 [研究成果]ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』が持つ膨大な人体部位のカタログとしての側面が明らかになると共に、広範な人間群像に関して豊富な身体表象が積み重ねられる一方で特定の登場人物の身体表象に関しては一貫して寡黙が貫かれ、身体的存在の確証が読者に十全に与えられずにいることなど、身体表象を巡る作家の偏向が明らかになった。作品全体に渡る身体表象の分析、比較、評価の作業は論文("A Study on Body Images in James Joyce's Ulysses")として発表した。
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Research Products
(1 results)