2007 Fiscal Year Annual Research Report
extensionという概念の変容に着目したサイボーグ技術に関する思想の研究
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19820040
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Research Institution | Graduate School of Film Producing |
Principal Investigator |
柴田 崇 Graduate School of Film Producing, 映画プロデュース研究科, 助手 (10454183)
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Keywords | 思想史 / サイボーグ / extension |
Research Abstract |
「身体を延長するもの」「身体の機能を拡張するもの」「身体から外化したもの」の三つの内包を持つextensionという概念は、新しい技術が登場するたびに技術を身体との関係で記述してきた。したがって、この概念の起源を特定し、変遷を追跡することで、各技術の特性を「原型」との差異として解明できる。本研究では、サイボーグはもちろん、補綴技術、機械と人間の共生関係を主題にした研究書、小説、映画、漫画、アニメーション作品、さらに新しい技術が開発されている現場の語りまで、関係資料を縦断的に収集し、extensionの用法サイボーグ技術の特性を解明する。 このような系譜学的方法の成功には、レファレンスの豊富さが鍵になる。資料の収集と分析の作業は継続中だが、19年度の成果としては、「拡張」の系譜の指標になるS・バトラーの『エレホン』(1872)とJ・D・バナールの『宇宙・肉体・悪魔』(1929)の特定があげられる。前者では機械の進歩が人間の進化のスピードを凌駕する不安が描かれており、後者では機械との接合による人間の人為的な進化が主題になっている。蒸気機関の発明を背景に機械を一種の生物種と見なして進化を論じる前者は生物と機械の類推を基調にし、J・B・S・ホールデンの生物遺伝学に触発された後者は人為的な「改良」の操作が機械だけでなく人間にも適応できる(適応されるべきである)という発想を基調にする。後者の発想は、K・ウォーリック(2002)の発想の「原型」になっている点で特に興味深い。バナールの思想は、今日のサイボーグ技術の特性を解明する「原型」の役割を果たしているのである。 19年度の成果を受けて、ジャパニメーションの代表作の一つとされる『Ghost in the Shell/攻殻機動隊』(押井守監督,1995)を「拡張」の系譜から解釈する論文を執筆中である。
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