2008 Fiscal Year Annual Research Report
extensionという概念の変容に着目したサイボーグ技術に関する研究
Project/Area Number |
19820040
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Research Institution | Graduate School of Film Producing |
Principal Investigator |
柴田 崇 Graduate School of Film Producing, 映画プロデュース研究科, 助手 (10454183)
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Keywords | 技術思想史 / 技術哲学 / サイボーグ / extension / メディア / マクルーハン / アフォーダンス / ギブソン |
Research Abstract |
extensionという概念は、新しい技術が登場するたびに技術を身体との関係で記述してきたが、今日のサイボーグ技術もその例外ではない。本研究の目的は、状況的な分析から一歩進めて、サイボーグ技術をextensionの系譜に位置づけることで理解しようとするものである。既にこの研究の出発段階で、extensionには「身体を延長するもの」「身体の機能を拡張するもの」「身体から外化したもの」の三つの内包があることが明らかになっていた。本研究は、各々の概念の起源を特定し、変遷を追跡することで、サイボーグの特性を「原型」との差異として理解することを目的にするが、そのためには、extensionの系譜学の方法論を洗練させる必要がある。平成20年度は、各概念のレファレンスの作成と並行して、具体例を通じて方法論を構築、提示すること第一の目標とした。 方法論の構築には、第一に、extensionの系譜に定位した思想家と技術状況の二項関係に加え、当時の思想に影響力を持った理論状況に目配せすること、第二に、「原型」に定位する一方、「原型」の論理を批判的に対象化する思想家の登場に注意することが必要である。後者は、系譜の結節点としてそれ以後の思想に大きな影響を及ぼすだけでなく、全く新しい系譜が形成される可能性がある点で、系譜学上、極めて重要である。平成20年度の具体的成果としては、J・J・ギブソンのメディウム論が、デカルトに起源を持つ「延長」に定位しつつデカルトの心身二元論を覆す可能性があることを、同じくメディウムに着目した同時代のF・ハイダーの心理学説、さらに通信モデル、サイバネティクスという理論状況に目配せしながら解明した論文(「ハイダーとギブソンのメディウム概念」[印刷中])と、extensionをめぐるM・マクルーハン、E・T・ホール、R・B・フラーの間の論争に新解釈を提出した論文(「マクルーハンのextensionのオリジナリティーについて」)の二本に加え、extensionを切り口にマクルーハンとギブソンのメディウム概念を比較した学位論文(「20世紀におけるメディウム概念の成立と変容」)があげられる。
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Research Products
(2 results)