2008 Fiscal Year Annual Research Report
生命倫理学における尊厳死言説と「死の教育」の歴史的社会的関連性に関する基礎的研究
Project/Area Number |
19820045
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
大谷 いづみ Ritsumeikan University, 産業社会学部, 教授 (30454507)
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Keywords | 尊厳死 / 生と死の教育 / 自分探し / 死生学 / 若者論 / 自律原則 / 生命倫理学 / キリスト教 |
Research Abstract |
1. 本研究は,生命倫理学における「自分らしい、人間らしい、尊厳ある死」を希求する言説の生成・展開と「自己決定」の原理と権利の確立との関連とともに,近年注目され,子ども・若者の自殺・殺人に対する処方箋とも期待される「生と死の教育」における「生・老・病・死」の語られ方との関連を歴史的・社会的に解析するための基礎的研究である。 2. (1)2年目にあたる本年度は,関連諸資料の蒐集と蓄積を継続するものとして、若者の自殺にかかわる諸資料と文献、さらに若者論の基礎文献を中心に収集・整理した。現段階では収集と整理にとどまっているが、スピリチュアリティ・ブーム、ロスト・ジェネレーション、自分探しと若者論との関係の解析とともに、生と死の教育がこういった若者をめぐる現象をどのように見立てているか、その解析は今後の課題としたい。 (2)本年度は、昨年来収集している生命倫理学の文献および「生・老・病・死」の文学・映画・演劇資料の表象の解析を行ったが、本研究者が継続して行っている尊厳死言説史について、死生学の言説はもちろんのこと、生命倫理学においてもキリスト教の影響が強いことにあらためて着目した。とくに、生命倫理学の先駆者といわれるジョセフ・フレッチャーが、生命倫理学胎動期ともいえる1960年代に日本に1年間滞在してキリスト教社会倫理を講じたことが判明した。また、刑法学者宮野彬が1970年代初頭に日本に紹介した"anti-dysthanasia"概念がフレッチャーによるものであることも明らかになった。 なお、2-(2)で明らかになった本研究の成果は、現在内定している基盤研究(C)「生命倫理学における安楽死・尊厳死論のキリスト教的基盤に関する歴史的社会的研究」(平成21〜24年度)において発展的に継承される。
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Research Products
(6 results)