2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19820053
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Research Institution | Kyushu International University |
Principal Investigator |
倉田 剛 Kyushu International University, 法学部, 准教授 (30435119)
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Keywords | オントロジー / 存在論 / 形而上学 / メタフィジックス / カテゴリー |
Research Abstract |
哲学の基礎分野という枠を超えて,学際的な学問題領域として発展しつつあるオントロジーの基本諸概念ならびに方法論を解明するという本研究の課題に関しては,「現代オントロジーの再検討」(『現象学年報』23,2007の中で或る暫定的な見通しを得ることができた。当該論文では,現代オシトロジーの「応用」と「厳密化」において問われることが少なくなってきた根本的な二つの問い,すなわち(1)「オントロジーの復権は,<伝統的な存在論>(実在の構造そのものに関する探究)の再評価を意味するのか」,(2)「フォーマル、オントロジーは非形式的、直観的なオントロジーを形式論理学によってフォーセライズしたものを指すのか」という問いを考察した。第子の間いに対しては,現代の支配的な潮流に抗して,存在のカテゴリーは,認識のカテゴリーおよび論理文法的なカテゴリーから独立してはいないという主張を根拠づけ,より柔軟な存在論的カテゴリー観を提示した。第二の問いに関しては,フッサールのフォーマル、オントロジー概念をもとに,フォーマル、オントロジーとフォーマル、ロジックが不可分の関係にあること,両者は互いに広い意味でのロジックの二つの側面であることを論じた。 応用オントロジーへの寄与ととう本研究のもうーつの課題については,知覚心理学者J.J.ギプソンラが提唱する生態学的心理学が,事態を基本カデゴリーと見なすオントロジーによって基礎づけられるという展望を得ることができた。この研究成果の一部は,「事態のオントロジーと環境の理論」という論文の中で発表されている。(河野哲也ほか編『環境のオントロジー』春秋社,近刊)。 オントロジーに関する哲学史的な研究の成果は,「ブレンターノ学派における命題と事態」(九州国際大学『教養研究』第14巻第第1号,2007年および「志向的作用に<関係>として捉えられるか」(『西日本哲学年報』第15号,2007年)において発表された。前者の論文においては,事態という存在論的カテゴリーの起源をオーストリア哲学に見出し,ボルツァーノの命題概念がマイノングのObjektiv概念,そしてマルティのUrteilsinhalt概念に変容していくプロセスを明確にした。後者の論文では,志向性の理論が帰結するオントロジーを現価の「志向性の関係説」を批判的に読み解くことによって解明することを試みた。
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Research Products
(4 results)