2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19820053
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Research Institution | Kyushu International University |
Principal Investigator |
倉田 剛 Kyushu International University, 法学部, 准教授 (30435119)
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Keywords | オントロジー / メタフィジックス / 存在論 / 形而上学 / オーストリア哲学 / ブレンターノ |
Research Abstract |
平成20年度は、課題である現代オントロジーに関する基礎研究を遂行するにあたり、存在論的諸カテゴリーのなかでもとくに論争的な性格をもつ命題的対象カテゴリー(命題・事態・事実)に焦点をあて、それを「環境の理論」と「オーストリア哲学」という二つの観点から明らかにしようとした。前者の観点から行った研究の成果は、『環境のオントロジー』(河野哲也編、春秋社、2008年)の第5章「事態のオントロジーと環境の理論」に要約される。この論文のなかでわれわれは、知覚し行為する生きものが住まう「環境」の記述するためにいかなるオントロジーが必要とされるのかという問いを提起し、「環境は、事態(states of affairs)を基本カテゴリーとするオントロジーによって適切に記述されうる」という主張を知覚論ならびに状況意味論の立場から正当化することを試みた。 後者の「オーストリア哲学」という観点から行った命題的対象研究の成果は、日本科学哲学会のワークショップで行った提題「現代オントロジーとオーストリア哲学における命題的対象論」と論文「F.ブレンターノによる非命題的判断論」というかたちで公表された。提題においては、「現代オントロジーの最大の源流は19世紀後半から20世紀初頭のオーストリアに存する」というテーゼのもと、とりわけ命題的対象に関する現代の諸議論を、いわゆる「分析形而上学」、すなわちフレーゲ、ラッセル、ヴィトゲンシュタインという「伝統」に固執する昨今の潮流に抗して、より広範な哲学史的観点から捉えかえそう試みた。一方、論文では同じくオーストリア哲学という文脈で生まれたブレンターノの「非命題的判断論」が果たして命題的対象を認める理論と比べ存在論的に「より健全」であるかどうかを吟味し、こうした理論が実のところ「否定的存在者」(<非白>や<非動物>など)といった対象を要請せざるを得ないことを明らかにし、そのうえで、非命題論的判断論の成否を存在論的な「健全さ」という尺度によって見極めることは困難であると結論した。
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Research Products
(4 results)