2007 Fiscal Year Annual Research Report
近世日本における輸入・国産織物の競合と共存:オランダ史料に見る工業化の歴史的前提
Project/Area Number |
19820055
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
藤田 加代子 Ritsumeikan Asia Pacific University, アジア太平洋学部, 准教授 (90454983)
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Keywords | 銀 / オランダ東インド会社 / 貿易 / 工業化 / 国産化 / グローバル・ヒストリー / 海域アジア |
Research Abstract |
初年度に当たる平成19年度には、主として(1)先行研究文献の収集と整理、(2)近世オランダ語史料の収集と翻刻、の二点を中心に研究を進めた。(1)については、グローバル経済史・海域アジア史・日本経済史の各分野で、江戸時代を通じて経済の「開放体系」から「閉鎖体系」への移行が実現した際に日本の物質文化がいかに変化したかという問題がどう論じられているかに焦点を当てた。また(2)については、研究対象とする期間の前半(1641年から18世紀初頭)を中心に、オランダ東インド会社(VOC)の未刊行史料(会計帳簿・報告書類)および長崎・対馬・薩摩を通じた対外貿易に関する先行研究に含まれる輸出(主として貴金属・銅)・輸入(生糸・織物)の額・数量を整理する作業をおこなった。これらの作業を通じて、17世紀の一世紀間に海外貿易が著しく縮小したのは事実であるが、その数量および全国経済に占める貿易の比重の変動については、ここ二十年間に研究が飛躍的に進展した日本対外関係史・海域アジア史の成果を踏まえて見直す必要があることが明らかになった。また江戸時代中後期には貨幣鋳造材料の海外流出制限・輸入代替化の進展によって海外貿易が落ち込むとはいえ、服飾文化における舶来品の影響に関する先行研究が示すように、都市化や市場経済の発達によって逆に国内消費者が海外貿易の影響を受けやすくなった面もある。そのため、量的には低下した貿易がもたらした社会的・文化的な影響を経済的な効果と合わせてどう評価するかという点が、次年度に向けての研究課題として浮かび上がった。
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