2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19820058
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
JAMES Baskind International Research Center for Japanese Studies, 海外研究交流室, プロジェクト研究員 (50455226)
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Keywords | 仏教言説 / 江戸・明治思潮 / 小泉八雲 / 宗教言説 / 禅浄思想 / 黄檗禅 / 宗派意識 / 科学思想 |
Research Abstract |
20年度に実施した研究の成果は明治時代の仏教史に限らずして、研究が進めば進むほど近代仏教言説を支えた江戸の仏教を見る必要があることに再認識した。近代の仏教、宗教言説というのは、西洋から入ってきた比較宗教思想や科学思想によって大きく影響された。しかし、宗派意識によってその新しい思想、知的技術への反応、解釈や受け入れ方が大きく違っていた。例えば、明治の真宗の中心的人物であった井上円了と清沢満之、そして禅宗の釈宗演と鈴木大拙との間には仏教の近代化に対する姿勢や解釈が趣を異にした。日本仏教の宗派意識は江戸時代の時に固まってきたと言っても過言ではない。十七世紀の半ばに入ってきた黄檗僧は江戸禅界、一般の仏教界においては多大なる影響を与えた。黄檗禅は「念仏禅」と呼ばれ、禅行と浄土行(つまり、坐禅と念仏を唱えること)ともに行われたことが批判の対象になった。中国仏教には坐禅中に念仏を唱えたことはごく自然なことだったが、目本では、念仏を主行とする浄土宗、浄土真宗は一定の宗派として形成し、禅(坐禅、悟り)と浄土行(念仏)が相互に相容れない別々な修行法として考えられてきた。この点においては、黄檗の禅浄思想(禅と浄土)を検討することによって、江戸から明治時代にかけての宗派意識や仏教概念の形成の真相と位置付けが把握できる。禅宗と連想されている「自力」と浄土教と連想されている「他力」という言説も近代の倫理言説においては黄檗の禅浄と関係があり、明治時代からますます発展してきた。19年度と20年度の研究成果としては、近世と近代の仏教思想、ジャンル形成、そして宗派意識・仏教概念の形成過程が一段と明らかになったと思う。
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