2008 Fiscal Year Annual Research Report
お金の流れ方と社会生活-精神障害者による会社経営をめぐる文化人類学的研究
Project/Area Number |
19820060
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Research Institution | Research Institute, National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
間宮 郁子 Research Institute, National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities, 障害福祉研究部, 流動研究員 (30455381)
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Keywords | 精神障害者 / 文化人類学 / 継続的就労 / コミュニケーション / お金の流れ方 / エンパワメント |
Research Abstract |
本研究は、1)主に統合失調症を経験した人々にとって「働いている」というリアリティを構築する諸要素と主要な論理を明らかにすること、2)統合失調症を経験したり、言語獲得過程にありながら、精神障害者たちが何らかのコミュニケーションを行い、周囲の人々に仲間として認められるプロセスを明らかにすること、3)精神障害者たちの「働いている」というリアリティ、支援体制、およびお金の流れ方の有機的な関係について考察することを目的とする。調査には文化人類学を基盤とした長期フィールドワータを用いた。 長期フィールド調査とデータ分析の結果、「働いている」「一人前である」というリアリティは、各人一人ひとりのライフスタイルを体験的に熟知していることを基盤に構築されており、このリアリティは、周囲の支援専門職、家族たちが、(1)本人の体験に即して診療・支援方針の見定めを行い、(2)「ビョウキ」が出ている人格と、病的世界に陥っている本人との区別し、(3)仕事が思うようにできなくなっている精神障害者へ、本人の行動および身体的経験を重視した問題の具体化・視覚化による、対人コミュニケーションの柔軟性を高める中で構築されていることが明らかとなった。また、精神障害者の継続的就労を可能にする職場環境整備における要点として、(1)病的世界にいる本人と周囲の人とのコミュニケーションを可能とさせる慣用表現、(2)そのダイナミクスを支える成員(障害者を含む)の社会的、人格的な成熟状態、(3)こうしたダイナミクスを保持する職員配置および給与分配が抽出された。これらはいずれも精神疾患に起因する症状や病理との関連性を持つものの、全く同一のものではない点が注目される。 本研究より抽出された個人主義的価値観、およびコミュニケーションの柔軟性を重視すべき具体的な場面の提示は、対応困難な事例が多い精神障害者の継続的就労支援の一モデルとなるものである。
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Research Products
(2 results)