2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19830001
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Research Institution | Sapporo Gakuin University |
Principal Investigator |
佐藤 陽子 Sapporo Gakuin University, 法学部, 講師 (90451393)
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Keywords | 刑法 / 精神医学 / 刑事政策 |
Research Abstract |
本年度は、とりわけ刑事法的な文献を中心として安楽死・尊厳死に関する検討をおこなった。なぜ同意殺人が犯罪として規定され、同意傷害も条文そのものは存在しないが、実務や多くの学者の間で(傷害罪として)処罰すべきものだと考えられているのかを明らかにすることで、安楽死・尊厳死(その過程にある同意傷害)の特別な取り扱いを正当化できないかと考えた。 まず本研究の端緒となったリンゲルのテーゼ、「自殺を行う者は、すべて自殺前症候群という病気に罹患している」は、刑法解釈論上用いるのが困難であることが明らかになった。なぜなら、このテーゼは安楽死ケースも含むものだからである。その他の精神医学の文献でも同様の検討をおこなったが、いずれの文献でも、通常の自殺と安楽死は、鬱に由来するものと解されており、安楽死を特別扱いするための要素はなかった。 また「自己決定」というキーワードだけでは、同じく安楽死を正当化しないことも明らかになった。それは同意殺人を処罰する現行法に反するからである。 その他のいくつかの検討を経て、安楽死・尊厳死の適法化もありうるが、被害者の承諾論を前提にして、「他人の生命のタブー化(他人の生命を重視する価値観の薄れに繋がる)」を重視する刑事政策的な判断が重要ではないかという結論に至っている。しかし、今後起こりうる法政策に向けて、安楽死・尊厳死を許容する基準を明らかにするために、「刑事政策」を構成する更なる要素の検討を要していることも明らかになった。
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Research Products
(4 results)