2007 Fiscal Year Annual Research Report
アフリカ国家論構想 西アフリカの産業を巡る国家政策と地域連帯
Project/Area Number |
19830002
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鍋島 孝子 Hokkaido University, 大学院・メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (30447049)
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Keywords | 政治学 / 社会学 / 開発経済学 / 木綿産業 / 市民社会 / 西アフリカ |
Research Abstract |
本研究は、西アフリカにおける木綿産業を巡る国家の経済政策と市民社会の形成について調査し、アフリカの経済と社会の発展について考察することを目的としている。 平成19年度には、2月末より2週間程マリに現地調査に入った。同地では木綿産業の関係者、特に共同組合や労働組合、農業省担当者、農民、NGO、フランス経済協力関係者、世界銀行などからマリの木綿産業の実情の証言と問題点を分析してもらった。 従来、研究者代表は、アフリカの国家と社会は乖離するとの理論を展開していた。それはアフリカ社会が、血縁や氏族、民族、国家権力を握るエリート、そして大衆から構成されているからである。民族はサブ・ナショナリズムとして分裂する危険性を備えており、大衆は地理的にも経済的にも地方農村で疎外されている。 ところが今回、マリの市民社会の形成は新鮮な驚きであった。木綿会社の民営化や肥料の高騰に対して、社会の再編を行って対処した。むろん、国家当局側の主導に対して反発を招くこともあったが、情報の提供や説明の機会を設け、生産者の理解と参加が見られた。共同組合が木綿産業の基盤的組織として成立したのもその典型であり、労働組合が賃金確保のため会社と折衝している。農業開発銀行の貸し付けも共同債務となり、資金運営について農民の責任が問われる。 このように国家と折衝し、相互関係が密接である市民社会に人々の自主性と自律性の可能性を見た。 また、世銀などの外貨融資側も政策を変えてきていることが分かった。従来の画一的な自由経済の強制ではなく、実際に生産状況や社会組織を調べ、マリの社会再編を理解している。 以上のように、マリの木綿セクターにおける市民社会の形成は、アフリカの国家と社会を密接にした成功例だと評価できる。
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Research Products
(1 results)