2008 Fiscal Year Annual Research Report
アフリカ国家論構想 西アフリカの産業を巡る国家政策と地域連帯
Project/Area Number |
19830002
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鍋島 孝子 Hokkaido University, 大学院・メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (30447049)
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Keywords | 政治学 / 社会学 / 開発経済学 / 木綿産業 / 市民社会 / 西アフリカ |
Research Abstract |
平成20年度には、9月に2週間程ブルキナファソの木綿産業について現地調査を行った。この調査結果と、その後の研究の展開について報告する。 木綿はブルキナの主要産業で、原材料として輸出して外貨を得ている。輸送費高騰で肥料が買えないことや、環境変化による旱魃と水不足が生産者にとって大きな問題となっている。1990年代に輸出企業が民営化した。生産者団体は自治体から全国レベルまで組織化され、連携がとられている。農業銀行の貸付けは連帯債務となり、農民の資金運用能力と責任能力を養うのに役立っていると言う。また、ボボディラソに木綿大学があり、アフリカ各国の専門家の知識の共有のためにセミナーを開催している。西アフリカ経済通貨同盟UEMOAの域内では関税を撤廃している。世銀は木綿生産業の評価に基づいて、融資条件を国家に提示する。重要なのは、生産者団体内の意思疎通と農民の自治運営である。そこに国内外の様々な社会経済のアクターが関わっている。 このようなブルキナファソと平成20年3月のマリの調査結果を基に論文執筆中であり、『国際政治』159号に掲載予定である。アフリカ独自の発展とは何かを追求する。国家体制において開発・発展を阻害していたのは、国家と社会の離反であると考える。アフリカ社会には、民族やサブ・ナショナリズムによって分裂する危険性があり、地理的にも経済的にも疎外される人々がいるからである。アルマティア・センの「潜在能力」や文化人類学の理論を用いて、西アフリカの木綿産業の展開と抱えていう問題の分析を行う。また、国際的連携について、リベラリズムやコンストラクティビズム、帝国論を批判すると共に、世銀やNGOが現地重視に方向転換している動向を示す。ネオ・リベラリズムが破綻し、現地主導の開発に重点が移っている今日、アフリカにおける国家と社会の在り方を描き出すため、重要な問題提起と考える。
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