2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19830014
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
和仁 健太郎 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 助教 (40451851)
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Keywords | 海上捕獲 / 中立 / 戦時禁制品 / 封鎖 / 非中立的役務 / 海上経済戦 / 海戦法規 / 戦時国際法 |
Research Abstract |
本研究は、伝統的海上捕獲法の正当化根拠(伝統的国際法において交戦国はいかなる物に対していかなる根拠によって捕獲権を行使できたのか)を歴史的研究によって解明しようとするものである。平成19年度は、(1)国内の図書館で入手できる公刊資料を収集・検討し、また、(2)英国国立公文書館(The National Archives)において未公刊資料の調査も行った(英国について未公刊資料の調査まで行うのは、英国が海上捕獲法の成立史において特に重要な役割を果たした国だからである)。資料の収集・検討を一通り終えたばかりの段階なので、まだ断片的な知見しか得られていないが、それでもいくつかの興味深いことが分かってきた。まず、伝統的海上捕獲法を構成する様々な制度のうち、正当化がもっとも容易だったのは、戦時禁制品制度である。交戦国は、戦争遂行上の必要に基づき、敵国に輸送される戦時禁制品を捕獲できる。戦時禁制品を単に留置するにとどまらず、没収までできるのは、そうすることによって、私人による戦時禁制品輸送を抑止するためである(一般予防)。これに対して、封鎖制度と敵船敵貨捕獲制度は、戦争の用に供される物品であるか否かを問わず、あらゆる物品を捕獲・没収できるという制度であり、これを戦争遂行の必要によって正当化することはできない。それ故、これら2つの制度についてはそれぞれ、戦争遂行の必要以外の様々な根拠により正当化が試みられていたが、そのような試みが完全に成功していた訳ではなく、両制度は国際法上の正当性を欠くという主張すらあった。要するに、戦時禁制品制度、封鎖制度および敵船敵貨捕獲制度は、それぞれ固有の論理によって正当化が試みられていたのであり、正当性が強い制度も弱い制度も(あるいは正当性がない制度も)あった。従来の研究では、伝統的海上捕獲法のすべてが同一の根拠によって正当化されていたと考えられていたが、決してそのようなことはなかったのである。
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