2008 Fiscal Year Annual Research Report
共和主義的憲法観に基づく討議民主主義理論による裁判員制度の意義の再構成
Project/Area Number |
19830023
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
柳瀬 昇 Shinshu University, 全学教育機構, 講師 (90432179)
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Keywords | 憲法学 / 立法学 / 討議民主主義理論 / 共和主義的憲法理論 / 裁判員制度 / 司法権 |
Research Abstract |
本研究は、(1)討議民主主義理論そのものの精緻化とその実践例の吟味、(2)裁判員法の立法過程の分析、(3)討議民主主義理論に基づく裁判員制度の意義の再構成の3点からなる。 今年度は、前年度に引き続き、基礎的文献を網羅的に収集し、その内容の吟味を行った。そして、(1)に関して、今日までの討議民主主義論の展開を総括する論文「討議民主主義理論をめぐる議論状況」を発表した。(2)に関しては、連載中の「裁判員法の立法過程(1)〜(4・完)」が完結した。これは、裁判員法が制定されるまでの政策決定過程を詳細かつ客観的に叙述し、各争点について分析する論文である。これにより、裁判員法の立法過程で顕出された立法者意思に共和主義的憲法理論ないし討議民主主義論と通底するものがあり、これらの理論に基づき、同法を議論しうる余地があることを発見した。(3)に関して、その前提として、裁判所の司法権行使の民主的正統性に関する議論を整理し、国民の司法参加の制度の導入について、単純な民主主義の原理に基づき基礎づけることができないことを示した。そのうえで、裁判員法の憲法適合性や政策的妥当性について、討議民主主義理論に基づき一定の評価を行いうることにつき検討し、前者については論文として法律時報に発表し、後者については口頭報告として憲法理論研究会で発表した。さらに、裁判員制度の意義を討議民主主義理論に基づき再構成するならば、この制度は、国民が刑事事件の裁判という公共的な事項について、検討し、決定するという1つの「公共的討議の場(forum for public deliberation)」を創設するものであることを論証し、そして、それを通じて国民の公民的徳性(civic virtue)を涵養することを、制度導入のもう1つの意義として挙げることができると結論づけた。
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Research Products
(7 results)