2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19830026
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
片桐 直人 Kinki University, 法学部, 講師 (40452312)
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Keywords | 公法学 / 憲法 / 通貨 / 中央銀行 |
Research Abstract |
本研究は、公法学からの通貨法制の体系的把握と理論化を、ドイツの議論や周辺諸科学の成果を素材に検討するものである。本年度は前年に引き続き、比較法文献の検討及び周辺諸科学の成果の検討を行った。今年度の成果としては、多くの国々の中央銀行法には、中央銀行の政策遂行上の優先目的として「物価の安定」の維持が掲げられていること、並びに、その経済学的背景と、法学的(規範論的)意義が明らかになったことがあげられる。「物価の安定」目的は、中央銀行法において、作用上の統制原理として働きつつ、同時に、組織上の構成原理としても働いていることが確認された。この点は、近畿大学法学56巻4号に「中央銀行法における目的規定とその機能」と題して掲載される。同時に、本年は二カ年計画の最終年度にあたるため、これまでの研究の総括として、実務家等も交えて研究会を開催する予定にしていたが、日本銀行金融研究所からの招きで、セミナーを行うこととなり、その場で研究の総括を報告した。そこでは、憲法を中心とした中央銀行法制の全体的な展望を示すとともに、従来より議論のあった通貨主権概念、憲法65条と日本銀行の独立性、政府紙幣の問題、日銀法の在り方など通貨法制全域にわたる議論を、比較法的知見、経済学・経済学史知見なども交えつつおこなった。本年度の活動を通じて、従来から検討が必要とされていた通貨法の公法的側面を体系的に明らかにする作業が進み、政府紙幣の発行や中央銀行の在り方などさまざまな実務上の諸問題に対する有益な示唆が得られたと考えている。
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Research Products
(2 results)