2008 Fiscal Year Annual Research Report
中国における学校制度の柔軟性-子どもの多様性に対応する視点から-
Project/Area Number |
19830029
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
楠山 研 Nagasaki University, 教育学部, 助教 (20452328)
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Keywords | 中華人民共和国 / 学校制度 / 地方分権 / 校長責任制 |
Research Abstract |
本研究は国が集権的に定めている概念上の制度の枠組みの中で、地方の各レベルの政府が現地の実情を鑑みて、どのような弾力的運用をおこなっているのかをその背景まで含めて分析することを目的としたものである。対象国は多様で莫大な人口が広大な国土に居住している状況に対処するため、地方政府に一定の権限を与えてきた中国である。そもそも学校制度には、多様な集団を1つにまとめて、効率的に運用するという役割があるため、制度改革のみでは個々への対処に限界が生じてくる。よって本来的には固定的である(べき)制度に、ゆるやかな柔軟性を与えることができる取り組みが、学校制度の弾力的運用ということになる。 昨年度に引き続き、研究代表者のこれまでの研究成果や先行研究をもとに、中国の学校制度の構造(各段階の政府の役割、学校が有する権限など)を仮想した上で、現地調査や情報収集によってこれを確定することをめざした。現地調査については、中国に渡航し、学校訪問(小学校、初級中学、高級中学、大学)、校長を含む教員との面談、現地研究者との意見交換、資料収集を実施した。その結果として、中国における広義の学校制度においては、かなりの部分において柔軟性をもつようになっていることが確認できた。中国においてはこれまでも、中央が管理しきれないための多様性がみられていたが、そうした多様性を評価する考え方が広まっている。これにより、現象はそれまでと同様のものであっても、教育関係者や教員の意識が変わり、校長責任制や校本(学校に与えられたカリキュラム枠)が実質化し、それぞれの実践に積極性や子どもの多様性への配慮がみられるようになっていることを確認した。
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