2008 Fiscal Year Annual Research Report
フランス移民政策の変容と社会的権利:女性移住者による「承認」をめぐる仲介を事例に
Project/Area Number |
19830042
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
園部 裕子 Kagawa University, 経済学部, 准教授 (20452667)
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Keywords | 移民 / フランス / 女性 / 団体活動 / 連帯 / ヨーロッパ / アフリカ / 市民権 |
Research Abstract |
フランスにおける移民政策との移民の社会的権利の変容について、パリ市内の西アフリカ出身女性移民団体における参与観察を含めた質的調査から分析した。フランスでは90年代以降、移民の定住が認識され、フランス社会と移民コミュニティを結ぶ女性の役割が注目されている。とくに西・北アフリカなど旧植民地出身女性移住者が行う「社会・文化的仲介」と団体活動は、移民の社会編入を支援し、統合政策や都市政策を末端の現場で実施する行為者と位置づけられ、政府は短期雇用契約制度を設けるなど支援を行ってきた。支援を受ける女性移住者らは、受入国での社会編入において、滞在許可証の取得と更新、人種差別、住宅探し、失業などの困難に直面している。また、女性たちの識字や一夫多妻婚世帯内における地位など、送出国の社会的、経済的条件も、こうした移住後の社会編入条件に影響していることが分かった。 このようにすでに定住している移民に加え、2000年代には、新たに西アフリカから陸・海路による非合法越境者が急増している実態を、前年度に行った現地調査中の聞き取りから分析した。パリ市内の事例からは、これら新規入国者の滞在許可証申請は、滞在条件を制限する新移民法のため、さらに困難になっていることも明らかになった。聞き取りからは、こうした移民政策の転換に対処するため、仲介者らが、新たに一夫多妻婚と「女性性器切除(FGM)」を理由とした滞在資格獲得を戦略的に進めていることが分かった。送出国においても女性の地位向上を妨げる要因となっているこの2つの課題は、「アフリカ系」女性移住者にとっての最重要課題と仲介者らが考えているものである。受入国フフンスにおいては、国家によるイデオロギー的な人権擁護、女性の権利促進政策の対象となり、送出国社会の慣習からの女性や子どもの保護、自立が目指される。この新しい戦略については、さらなる調査と分析を要する。ここでは以上の調査結果から、女性移住者の社会編入要件および非合法越境についての調査結果をまとめ、それぞれ論文として発表した。
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