2007 Fiscal Year Annual Research Report
インクルーシブ社会実現に向けた聾者と聴者の協働による聴覚障害児特別支援教育の創造
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19830050
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
木村 素子 University of Miyazaki, 教育文化学部, 講師 (60452918)
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Keywords | 教育学 / 特別支援教育 / 聴覚障害児教育 |
Research Abstract |
本研究では、19世紀アメリカ合衆国において、聾当事者がどのように聴覚障害児教育に参与してきたのかを明らかにすることによって、我が国における特別支援教育における聾者と聴者の協同の在り方を展望することを目的としている。 本年度は、資料収集ならびに資料の読解を中心に研究を行った。資料収集については、米国初の寄宿制聾学校であるアメリカ聾学校、そして米国初の口話学校であるクラーク聾学校、さらにボストンに現存する通学制聾学校の図書館において、所蔵状況の調査を行うとともに資料収集を行った。結果、3校共に19世紀から20世紀前半の資料の所蔵が認められ、うち2校はアーカイブ化の作業を行っていることがわかった。一方で、当事者に関する系統的資料の所蔵は十分ではなかったことが判明したので、来年度は最も豊富に資料を所蔵するギャローデット大学図書館での追加的な資料収集を実施する予定である。 また、上記3校に加えて、イリノイ州シカゴ郊外の私立口話学校の見学を行った。分離的/統合的な学校、手話法/口話法を主とする学校、聾者スタッフの参与のある/ない学校等、異なった特徴をもつ現代の聾学校の見学から、今日の我が国における特別支援教育の在り方や本研究の分析における示唆を得ることができた。 資料の読解については、イリノイ州立聾学校主幹の聾者によるニューズレター"Deaf-Mute Advance"の読解と分析を行った結果、地域における聾者の交友関係の状況や、キリスト教関連の集会を通した当事者間の結びつき等が明らかになってきている。さらに読解と分析を進め、来年度はイリノイ州立聾学校に関係する聾当事者と教育の接点に関する論文発表を行いたい。 そのほか、障害当事者の権利運動についての辞典("The ABC-Clio Companion to the Disability Rights Movement")の翻訳に携わり、聾者の当事者運動に関わる見出し語の翻訳を担当した。本書は平成20年度中に刊行予定である。
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