2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19830072
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
野口 雅弘 Waseda University, 政治経済学術院, 助教 (50453973)
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Keywords | マックス・ウェーバー / ハンナ・アレント / 官僚制 / 公共性 / セキュリティー / 脱政治化 / DDR |
Research Abstract |
「新しい公共」(行政と市民との<協働>)という名において、政治的な党派性やコンフリクトの契機が否定されていくならば、それは「動員」に近くなる。本年度はこうした「脱政治化」という視点に注目しながら、「新しい公共」論を検討し、これに関係するいくつかの論文を執筆した。 まず、『はじめて学ぶ政治学』(ミネルヴァ書房)に発表した「官僚制(ウェーバー)」では、<近代的な普遍主義>と<儒教的な有機的秩序観>が、ともに個別的なものや、それらの聞の政治的闘争の契機を否定することで、官僚主導体制を正当化する論理として機能すること、つまり官僚制化と脱政治化の連関を示した。 また、「デマゴーグ以後」(『現代思想』)では、こうした脱政治化(「和の政治」、大連立の模索)がコンフリクトの顕在化を抑えることで、かえってデマゴーグ的なグノーシス主義(善悪二元論)を呼び起こしてしまうという連関を問題にした。 3月にはこのテーマに関してドイツで調査を行った。ドイツでも「第三の道」路線のなかで「市民参加(buergerliches Engagement)」が積極的に評価され、推進されてきた。しかし、DDR(旧東ドイツ)研究などからは、近年の「コミュニティ・ポリシング」はDDR当時の人民警察(Voklspolizei)にきわめて近いとの問題が提起されるなど、やはり賛否両論が渦巻いている。今後は、こうしたドイツの議論状況にも目配りしながら、全体主義、官僚制に関するハンナ・アレントの議論を再検討し、そこからもう一度ウェーバーの官僚制論を再構成していきたいと考えている。
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