2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19830074
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
今城 徹 Waseda University, 法学学術院, 助手 (20453988)
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Keywords | 不動貯金銀行 / 中小商工業金融 / 定期積金と給付金貸付 / 行員の付加価値労働生産性 / 外勤員の学歴と給与 / 行員のキャリア・パス |
Research Abstract |
平成19年度においては、申請時の研究計画に基づき、戦前・戦時期における不動貯金銀行の経営活動と行員管理に関する研究を行った。 不動貯金銀行の経営活動に関する研究の目的は、戦前期の同行と中小商工業金融の関わりを、多摩大学所蔵の「貯蓄銀行関係史料」を用いた実証的手法で解明することであった。不動貯金銀行に注目した理由は、同行が1915年から45年までつねに業界第1位の預貯金を誇った貯蓄銀行であり、同時に戦前期最大の中小商工業者向け金融機関でもあったからである。検討の結果、不動貯金銀行は1915年から3年満期月掛式定期積金の加入者に対する給付金貸付を実施し、26年から昭和恐慌期に全国都市部の借入目的の中小商工業者を獲得しながら経営規模を拡大させたことが明らかになった。 不動貯金銀行の行員管理に関する研究の目的は、やはり多摩大学所蔵史料を用いて、戦前・戦時期における同行の外勤員管理を実証的に検討することであった。不動貯金銀行の外勤員管理に着目した理由は、同行が採用した専属外勤員による戸別直接勧誘・集金制度が預貯金と給付金貸付の普及に決定的に重要であり、また彼らの処遇方法が常に経営上の最重要課題であったからである。検討の結果、(1)戦前・戦時期の不動貯金銀行は、行員数と付加価値労働生産性からみて、行員増加と労働生産性上昇を両立させていたが、他の大規模貯蓄銀行(大阪貯蓄銀行)の指標と比較すると低位であったこと、(2)初等教育機関出身者が大半であった外勤員の給与は、初任給において内勤員よりも高く、行内の上位学歴者と同ペースで、より長期間上昇したが、これは完全な能力給の給与体系の下で、年を追うごとに有能な外勤員しか残らなかった結果であったことが明らかになった。またキャリア・パスについては、現段階において9年間および15年間在籍者の情報を収集し終えており、引き続き検討中である。
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