2008 Fiscal Year Annual Research Report
地方分権改革後の地方自治体による行政組織改革と縦割り行政防止に関する要因分析
Project/Area Number |
19830086
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Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
三田 妃路佳 Sugiyama Jogakuen University, 現代マネジメント学部, 講師 (80454346)
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Keywords | 地方分権 / 行政組織改革 / 市町村合併 / 縦割り行政 / 公共事業 / 河川行政 / 事業休止 / 選挙 |
Research Abstract |
今年度の研究の成果は、第一に、行政組織改革が進んでいる自治体を対象として、その要因を抽出し、さらにその要因について検証にした点である。静岡県では行政組織改革により、課を廃止し目的に応じた室の設置、職位階層の7階層から5階層への変更、実務者への権限移譲が行われている。特に2007年度からは、国の縦割り行政に対応した組織を改め、施策実施部門を大括りしているため、研究実施計画として予定した、自治体への行政組織変化に関するヒアリング調査の対象とした。調査により、行政組織改革の背景には、県内の政令指定都市の増加で、県の権限移譲が進んだことがあることが分かった。そこで次に、権限移譲は行政組織改革につながるのかという問題意識に基づいて基礎的自治体への権限移譲が進んでいる広島県を対象とし、ヒアリング調査を行った。広島県では、権限移譲を行っても、当該事業に関する市町村支援のため、県の行政組織にはほとんど変化が見られなかった。静岡県と広島県の比較により、市町村合併等による基礎的自治体の行政能力の向上の程度が県の行政組織改革に影響を与えるということが明らかになった。 第二に、国の縦割り行政が事業実施に及ぼす影響について明らかにした点である。川辺川ダム事業は、治水・利水・灌漑・発電を目的とした国土交通省と農林水産省による直轄事業であったことから、事例として選択した。同事業は2008年12月に休止となったが、その要因の1つに、農水省の利水事業の再計画をめぐる住民訴訟に国が敗訴したことで、再度計画の策定が求められたことがある。農林水産省の計画の見直しにより、国土交通省による土地収用手続きが撤回されることとなった。すなわち、縦割り行政による事業実施は結果として、事業の見直しの一要因となるという、従来指摘されているような縦割り行政による事業の重複や無駄使いとは異なる新たな知見を得た。
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